グローバルに経営人材育成

グロービス 堀義人 2026.03.16

 Interviewer 清水憲司(本誌編集長)

── グロービスの事業について教えてください。

堀 日本最大の経営大学院(ビジネススクール)とベンチャーキャピタル、日本版ダボス会議である「G1サミット」を展開してきました。近年はバスケットボールのBリーグ「茨城ロケッツ」、ラジオ局の茨城放送、茨城県ひたちなか市で毎夏開催する音楽フェスティバル「ラッキーフェス」も運営しています。原則、すべての事業は最低でも日本一、そして目指すは世界一です。

── 経営大学院は開校20年間で1万人超が卒業したそうですね。

堀 開校時に比べ定員は20倍に増えました。ほとんどの学生は個人負担で、自分の能力を高めてキャリアを築きたい、自分の可能性を信じて自分のやりたいことを実現したいという思いで入学してきます。一方、企業も人的資本経営の観点から、日経平均株価を構成する225社の8割以上が当社の研修や動画学習サービス「GLOBIS学び放題」などを採用しています。当社が創業以来、右肩上がりで成長してこられたのは、個人と企業の双方が能力開発の必要性を強く感じているからです。

── 日本企業は欧米に比べ経営力が劣ると指摘されます。

堀 そのようにいわれてきましたが、日経平均株価はこの3年間で約2倍になり、当社のクライアント企業はその中でも特に伸びています。ここには経営能力の向上が表れています。(ヒト・モノ・カネの中でも)投資対効果が最も高いのは人への投資です。人材育成をすると、きちんとした意思決定ができ、新しいプロダクトが生まれ、テクノロジー活用も進み、良い組織を作っていける。日本企業の中でこうした認識が高まっていると感じます。

── AI(人工知能)時代に必要とされる人材とは。

堀 三つの能力が必要になるでしょう。一つ目はやはりクリティカルシンキング(批判的思考)。物事をしっかり理解して、AIが間違っていないかどうか判断できる力です。二つ目が相手の感情を踏まえ、よい関係性を構築できる人間関係能力。三つ目はクリエーティブな発想力です。人々に喜びを提供できるようなエンタメ的な発想力もここに含まれます。

 AIの普及に伴い、知識偏重型の教育は廃れ、「考える力」を伸ばすことが一層、重要になります。グロービスでは知識はあくまで道具であると考え、知識やフレームワーク、理論をもとに分析を行い、状況判断し、選択肢を挙げて多くの人と議論しながら最も適切な意思決定をするという能力の育成を重視してきました。もちろん議論の途中でAIに相談することは大事ですが、最後に責任を取るのは人間ですから、こうした教育の重要性は変わりません。

水戸の活性化に使命感

── 茨城県や水戸市の地方創生にも取り組んでいます。

堀 実家も東京に移ったので、水戸に帰る機会が30年以上ありませんでした。それが2015年にスイミングクラブの同窓会で水戸に行った時、街の光景を見て衝撃を受けました。空洞化して人がいない。調べてみると、八つあったデパートは七つが撤退し、商店街もシャッター街になり、通行客は5分の1に減ったことが分かりました。会社経営では、右肩下がりの時は外部から相当の圧力がかからないと、なかなか浮上できません。僕が関わったとしても地元が良くなるとは限らないけれど、見て見ぬふりをすることもできない。そんな使命感が湧いてきました。

 そこで始まったのが「水戸ど真ん中再生プロジェクト」です。グロービスのキャンパスを開設して経営人材を育成したり、起業を目指す人材の集まるコワーキング施設や広場など街中の再開発を進めたりしてきました。Jリーグの水戸ホーリーホックがJ1に昇格し、茨城ロボッツも(最上位カテゴリーの)Bプレミアに入ってきます。すごく活気が出て、「何かできるぞ」という雰囲気が広がってきました。

── 地方創生に必要なこととは?

堀 民間主導ということでしょう。長崎はジャパネットたかたの高田明さん、前橋もJINSの田中仁さんが走り始めて街の風景が変わってきた。グロービスが展開するようなスポーツ、メディア、エンタメとの連携も重要です。そうすることで人が集まり、その動きが多くの人々に伝わっていく。そこに都市開発が組み合わされると、街が変わっていきます。

── グロービスの将来像は?

堀 グローバルに伸びていきたいと考えています。世界のメガスタートアップを育て、G1サミットに集まるリーダーたちとともに、日本を「もっとオンリーワンの国」にしたい。そのエンジンはスタートアップと大企業の変革力です。いずれもベースは経営能力ですから、グロービスの力を役立てていきたいと考えています。

横顔

Q 30代はどんなビジネスパーソンでしたか

A グロービスを創業したのが30歳のとき。連日の徹夜、会社で寝泊まり。必死でした。

Q 仕事でピンチだったこと

A 2022年のラッキーフェス立ち上げです。前身のフェスが千葉に移転することになり、何とか茨城に音楽フェスを残したいと。しかし、これだけの大規模フェスです。それを経験もノウハウもコネクションもなく、しかも開催まで半年という状況でした。とにかく人に会い、動き続けました。

Q 休日の過ごし方

A ロボッツの試合観戦です。冬はスノボを楽しんでいます。

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事業内容:ビジネススクール運営、企業研修、ベンチャーキャピタル事業など

本社所在地:東京都千代田区

創立:1992年8月1日

従業員数:1004人(グループ、2025年4月1日)

法人向け人材育成サービス年間取引企業数:約3400社

経営大学院 在校生・卒業生数:1万3000人以上(26年2月1日)

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 ■人物略歴

ほり・よしと 

1962年生まれ、茨城県出身。県立水戸第一高校卒業後、86年京都大学工学部卒業、米ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。住友商事を経て92年グロービスを設立し、2006年にグロービス経営大学院を開学。Bリーグ「茨城ロボッツ」や茨城放送のオーナーも務める。63歳。