企業主導型で保育園再生を

ONE ROOF社長 菊地元樹 2024.10.21

 従来の枠を超え、子ども、保護者、企業、地域に寄り添う保育園を作る。(聞き手=北條一浩・編集部)

 新しい発想の保育事業を展開したいという思いから会社を立ち上げました。これまでの保育園にはなかった方法として、プロジェクションマッピングなどAI技術を駆使した保育手段を開発・提供し、保育士の質によって差が出ない保育環境づくりをサポートしています。また地域の特徴を生かした保育園を実現するため、例えば和の文化に精通した人の多い東京都墨田区の保育園では、和室を設けて茶道の稽古(けいこ)も行うなどの提案をし、実現しています。

 そもそものルーツは、私の祖父・大滝政治が1923年、関東大震災で多くの建物が倒壊し、行き場がなくなった子どもたちのために仮設住宅地区の片隅で青空保育を始めたことにあります。そして30年、保育園を運営する東京児童協会の前身、大島中央幼稚園が江東区でスタートしました。

 東京児童協会は65年、父の代に東京都から社会福祉法人の認可を受けました。現在は都内で20以上の保育園を運営しています。長い歳月を保育に取り組んできたノウハウの蓄積を継承しながら、現代のニーズと世界にも目を向けた新たなチャレンジをすべく、ONE ROOFを立ち上げた次第です。現在、私が経営戦略室長を務める東京児童協会とONE ROOFは「ワンルーフアライアンス」という名称のもとに活動を行っています。

ホテルの中に保育園

 ONE ROOFがいま最も力を入れているのが企業主導型保育園です。成田空港からほど近い「ホテル日航成田」の中にある「なりた空の保育園」は運営も手がけています。世界中から人が集まるその立地を生かし、スリランカ人の園長をはじめ多くの外国人が働いています。ONE ROOFと契約を交わした企業に勤める従業員の子であれば、誰でも利用できます。

 2016年に内閣府管轄の下で始まった企業主導型保育園は、助成金の交付と認可保育所より緩やかな設置条件のためどんどん増え、一時は8000社もの企業が保育園を作りました。しかし、保育士の確保が難しいことなどから、閉鎖する園が多いのが現状です(※公益財団法人・児童育成協会によると、2024年4月現在の企業主導型保育施設は4387園)。

 ご存じのように保育業界は、仕事が多忙かつ待遇があまり良くないと思われているため、保育士が不足しています。その現状を打開する有効な手段が企業主導型保育園です。企業主導型保育園が増えれば、離職防止につながる福利厚生の改善を期待できます。また、企業自体のイメージ向上にもつながります。

 当社が保育園に関するニュースの発信や保育の相談に対応するため運営しているオウンドメディア「ハグシル」にも多くの問い合わせがありますが、企業主導型保育園の設備デザインや教育コンテンツ、運営の仕方などをアドバイスしながら企業と併走しています。当社はできるかぎりのアイデアとノウハウを提供するとともに、「なりた空の保育園」の成功を足掛かりに、企業主導型保育園の海外展開に向けても努力していきたいと考えています。

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企業概要

事業内容:保育園運営の支援、企業主導型保育園の運営・支援、放課後児童健全育成(学童保育)の支援

本社所在地:東京都江戸川区

設立:2017年8月

資本金:1000万円

従業員数:60人

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 ■人物略歴

きくち・もとき

 1982年生まれ。明治大学経営学部卒業後、社会福祉法人・日本保育協会勤務を経て、同法人・東京児童協会に入職。2009年、白河かもめ保育園(東京都江東区)の副園長に就任後、日本全国ばかりでなく世界各地の保育園を訪ねて研究。17年、企業主導型をはじめ多様な保育園の展開を目指し、ONE ROOFを設立。

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週刊エコノミスト2024年10月29日・11月5日合併号掲載

菊地元樹 ONE ROOF社長 企業主導型で保育園再生を