遠隔教育で地域活性化支援

Schoo代表取締役 森健志郎 2025.10.06

 社会人向けに、オンライン学習サービスを提供するSchoo(スクー)。時と場所を選ばない特徴を生かし、地域や離島の自治体などと提携し、「学習・教育格差」の解消と地域の担い手となる人材育成に取り組む。(聞き手=内山勢・地域ジャーナリスト)

 スクーの学習サービスを活用した地域創生支援事業に力を入れています。今年10月からは、地域共創型人材育成サービス「Schoo Mesh(メッシュ)」を開始しました。自治体・地元企業・教育機関などと連携し、地域固有の課題や実情に即して、セミオーダーで設計・運営を行います。Meshには、「網」「編み目」「調和」という意味があります。地域の多様な価値観や歴史をともに学び、ひとつに編み上げていくという思いで名付けました。鹿児島県日置市が導入第1号ですが、2017年から取り組んでいる鹿児島県奄美市(21年に同市など奄美大島の5市町村と包括提携)がベースになっているため、奄美市が「第ゼロ号」です。

 スクーのコンテンツには、ビジネスマナーやマネジメントなど社会人が身につけるべきものがそろっています。中でも、今地域で求められているのは、生産性を上げるための最新のDX(デジタルトランスフォーメーション)とAI(人工知能)です。背景には地域の少子高齢化や都市部への若手の流出という深刻な人手・人材不足があります。しかし、それらを教える人材が地域には少ない。各分野の専門家がそろっているスクーだからこそ、最先端のコンテンツを提供できる価値は大きいでしょう。それも地域のみなさんに主体的に協力してもらい、一緒に考えて地域全体で支え合う「学びの場」の仕組みを作っていくことが何よりも大切です。ですから対面での学びが必要になった時は、地元の企業とも連携します。そうすることで地元の企業もより活性化しますし、教える人材も育ちます。

東京一極集中の「再編集」を

 11年にスクーのサービスを始めた時に、一番利用していただいたのが地域の社会人でした。「学び場」は都市部に集中して、地域や離島に住んでいる方は学びたくてもそういう場所や機会がなく、オンライン学習が最適だったのです。でも、ある時から地域ユーザーの伸びが止まりました。なぜだろう?と調べたら、「地域の未来を一緒に変えていこう」と共鳴してくれる人が周りに少なく、継続的な学びをあきらめてしまう人が多いことがわかりました。それなら、我々が地域全体で支え合う「学び場」の仕組みづくりを支援していこうと。地方自治体との最初の連携は、10年前の福岡市、千葉市です。福岡市のスタートアップ政策をけん引した職員の的野浩一さん、熊谷俊人さん(千葉市長、現千葉県知事)が、オンライン学習を軸とした地域創生の可能性を感じていただけたリーダーです。

 我々の強みは、学びを通した「融和」です。語学など体系的に教えるスキルは英会話教室やAIアプリでもできます。でも、他県から来た人や外国人が地域に移り住んだ時に、ともに学ぶ場があれば、価値観を共有し地域の人たちと融和することができます。最終的には、東京一極集中の「再編集」を目指したい。そのためにはDXやAIなど最先端の知識・知見の「武器」を持ち、地域が一体となって盛り上げることです。そのサポートとして都市部の人材を地域に紹介する移住転職支援サービス「LoLLL(ロール)」も今年2月から始めています。

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企業概要

事業内容:オンライン学習サービス、同サービスを活用した地域創生支援

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2011年10月

資本金:6億7621万円

従業員数:約250人(派遣・業務委託含む)

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 ■人物略歴

もり・けんしろう
 1986年大阪府生まれ。2009年近畿大学経営学部卒業後、リクルートメディアコミュニケーションズ入社。広告の企画制作を担当。同社を退社後、11年10月にSchooを設立。365日毎日生放送と約9000本の動画コンテンツを組み合わせたハイブリッド型の学びを展開。15年から同サービスを活用した地域創生事業を開始。これまで累計75自治体と提携。24年東証グロース市場上場。38歳。

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週刊エコノミスト2025年10月14・21日合併号掲載

森健志郎 Schoo代表取締役 遠隔教育で地域活性化支援