人を「助ける」AIを創出

Helpfeel代表取締役CEO 洛西一周 2025.03.10

 テクノロジーと人のあいだに立ち、情報格差のない社会をめざす。(聞き手=北條一浩・編集部)

 テクノロジーの可能性はどんどん広がっています。しかしそれは、人間が快適に使いこなせるものでなければなりません。われわれは両者のあいだに立ち、人がスムーズにテクノロジーと接することができるように助けることを使命と考えています。そこで、そうした「助け」を「感じて」もらいたいとの思いから社名をHelpfeelとしました。

 人とテクノロジーが向かい合い、そのあいだから光が差してくる。建築家の安藤忠雄氏が設計した「光の教会」(大阪府茨木市)のあの十字架の光にオマージュ(敬意)を捧げるつもりで会社のロゴを作り、われわれがまさにそうした光になれることをめざしています。

 当社のプロダクトの中から、社名と同名の最新サービス「Helpfeel」を紹介します。これはカスタマーサポートの分野で、顧客の問い合わせにデジタル対応するもので、AIが質問をいち早く予測して提示します。例えば銀行サイトの問い合わせページで、「そう」とひらがな2文字を入力しただけで「相続」というキーワードのもと「相続手続依頼書の書き方を教えてほしい」「相続手続きの流れを知りたい」などのセンテンスが表示されます。AIの瞬時の予測で、「あなたが聞きたいのはこういうことですか?」とサイトのほうから歩みよってくれるわけです。

 

2019年から始めたこのサービスは500サイト以上、350社以上に採用され、さらに拡大中です(2025年1月末現在)。翌20年はコロナ元年で、エンドユーザーが店舗に足を運ばなくなったぶん、サービスに対する電話やウェブでの問い合わせが激増しましたが、その前年にリリースしていたことで大きな反響を呼び、コールセンターの人材育成などに悩む企業から歓迎されました。

増井俊之氏との出会い

 私は子どもの頃から工作が好きで、なんでも自分で作っていました。大分県在住の小学生時代にわらじ作りにハマり、地元のわらじ名人に弟子入りしたこともあります。高校生の時には、ほしい情報だけピンポイントで集めて加工や編集ができるソフト「紙copi」を開発、これが100万ダウンロードを突破し、10年間で3億円以上を売り上げました。この頃に出会ったのが、現在当社のテクニカルフェローを務めている増井俊之氏です。増井氏はiPhoneの日本語入力システムを生み出した人で、まさに予測変換のパイオニア。「Helpfeel」はこの増井氏の発明をベースに、当社のエンジニアが改善を重ねてリリースしたサービスです。

 増井氏は「面白い大学生がいる」ということで私を情報処理推進機構(IPA)の事業に引っ張り、「東京に出てこい」と言ってくれました。この増井氏をはじめ、テクノロジーの有効活動に奔走し、またそうした活動を支援する投資家の先輩たちに刺激され、自分も人々の快適な生活をサポートするテクノロジーを創出する会社を日本で立ち上げたいと考えるようになりました。

 シンプルかつ最短距離で情報にアクセスできることにより、人々のあいだにある情報格差を解消したい。今後も世界中の人々を「助ける」AI事業をさらに拡大・継続していきます。

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企業概要

事業内容:検索型AI−FAQシステム「Helpfeel」の開発運用

本社所在地:京都市上京区

設立:2020年12月

資本金:1億円

従業員数:204人

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 ■人物略歴

らくさい・いっしゅう

 1982年大分県生まれ。中学生からプログラミングを始め、高校時代はPC雑誌に取材される人気者に。当時、京都の洛西地区在住だったことから付けたハンドルネームを通称として今も使っている。本名は永田周一。慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了後、2007年、米国シリコンバレーでブラウザ上でコラボしながらコンテンツを作成・編集できるツールを提供する会社の起業を経験。20年にHelpfeelを設立した。