非資源分野好調、実績で商社3冠視野

伊藤忠商事 石井敬太 2026.01.26

Interviewer 清水憲司(本誌編集長)

非資源分野好調、実績で商社3冠視野

── 2026年3月期は最終利益9000億円と予想し、2年連続で最高益の見通しです 。最終利益、自己資本利益率(ROE)、時価総額で総合商社3冠を視野に入れています。

石井 時価総額は年度末(26年3月31日)に確定するので、まだ分かりませんが、現時点では総合商社トップです(編集注:1月9日時点で伊藤忠15兆8885億円と首位、2位三菱商事は15兆2373億円)。最終利益とROEは今期に商社首位を達成できるとみています。従来から積み上げてきた結果だといえます。 

── 以前から非資源分野のビジネスに注力してきました。

石井 資源分野は市況に左右されるので、資源価格が低位の現在の環境は当社にはプラスでしょう。当社は、顧客視点で商品・サービスを開発する「マーケットイン」を重視しています。これまでの投資も、自分たちが一番よく分かっている国内案件が多いです。ファミリーマートやデサントなど子会社化したビジネスが堅調なことも好業績の要因です。これに加えて、利益水準で20億〜50億円という中堅クラスの事業会社を大切に育てて収益が伸びていることで、基礎収益(前期実績は約7700億円、今期8000億〜8200億円見通し)が積み上がっています。

── 「稼ぐ力」をどのように磨いてきたのですか。

石井 当初は投資対象の事業会社を持ち分法適用会社にして人材を派遣します。販売や企業統治の状況をにらみながら、「当社の中に取り込んだらうまくいく」と判断したら子会社化することに注力していました。当社会長の岡藤(正広氏)は、「かけふ(稼ぐ、削る、防ぐ)」や「マーケットイン」、環境変化に臨機応変に対応する「ハンググライダー経営」などを提唱しており、これらの経営哲学をたたき込まれた世代が各事業会社に派遣されて、成果を上げています。

バフェット氏投資の効果

── 米国シリコンバレーに投資会社を設立して、生成AIなど先端技術を持つ企業の発掘を始めました。

石井 生成AIは社会やビジネスに確実に浸透します。業務の効率化から広がっていくと思いますが、今後は実際のビジネスでの応用事例も広がっていくでしょう。例えば、無人店舗や自動運転、警備的な監視業務などが想定されます。当社グループにはCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)があり、AIに関してはかなり前から海外の先端情報が入っていました。まずは、社員のAI習熟度を上げる狙いでは、(Open AIの)ChatGPTや(グーグルの)Geminiとつながっている「i-Colleague(アイカリーグ)」という生成AIを社内で持っており、社員にはこれを使い倒せと呼びかけています。

── 26年1月に1株を5株に分割しました。どのような考えによるものでしょうか。

石井 株主を大事にすることは、企業理念でもある「三方よし」の一つだと考え、配当金を毎年増額するか最低でも横ばいとする「累進配当」を実践してきました。一方、当社の株価が上がってきたため、まとまった資金がないと買いづらくなってしまいました。 東京証券取引所から100株当たり20万〜50万円にして、個人投資家の投資を引き出してほしいとの助言もあり、2、3年前から分割を検討していました。東証の方針も踏まえて5分割にしました。

── 著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが20年8月に大手商社5社に出資しました。バフェット氏の存在はどんな影響を与えましたか。 

石井 バフェットさんは、それまで外国の投資家から注目されていなかった総合商社にスポットライトを当ててくれ、株価を盛り上げてくれました。以前は「総合商社とは何やっている会社か」と聞かれても、うまく説明できる投資家はあまりいませんでした。日本独自の業態であり、PBR(株価純資産倍率)も低かったですしね。そこにバフェットさんが投資したということで世界中の投資家が注目したと思います。

── 26年、米国や中国など世界経済の動向をどう見ていますか。

石井 自由主義国の「番長」は米国という従来の考えは改めないといけない場面かもしれません。サプライチェーンを含め何もかも米国一辺倒でよいのかどうか。 グローバルサウス(新興・途上国)の中でも力をつけた国々は、違う同盟に入るかもしれないことを見極めながら行動する必要があります。

 中国は不動産バブルがはじけてその立て直しに時間がかかると思われます。ただし、消費は一定の水準を維持するでしょうし、現在では日本よりも圧倒的に生産力が強く、技術力も侮れない。中国にはビジネスチャンスがまだ豊富にあると考えています。

(構成=浜田健太郎・編集部)

横顔

Q これまでに最もピンチだった場面は

A 米国から帰国後、過去在籍した課が大赤字を抱えた中で課長になり、部門長から「課を潰せ」と指令を受けました。ならば(社内の)別部門に引き取ってもらうとチラつかせながら無事再生しました。

Q 最近買った物は

A 音楽CDを集めるのが好きです。最近のお気に入りはバド・パウエル(ジャズピアニスト)のCDです。

Q 時間があればしたいこと

A 勝手気まま、「フーテンの寅さん」のような旅行がしたいです。

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事業内容:総合商社

本社所在地:大阪市

設立:1949年12月

資本金:2534億円

従業員数:11万5089人(2025年3月末、連結)

業績(25年3月期、連結)

 収益:14兆7242億円

 最終利益:8802億円

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 ■人物略歴

いしい・けいた

 1960年生まれ。早稲田大学高等学院、早稲田大学法学部卒業。83年4月伊藤忠商事入社、主に化学品部門を歩み、2014年執行役員、17年常務執行役員、20年専務執行役員を経て21年4月から現職。65歳。

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週刊エコノミスト2026年2月3日号掲載

編集長インタビュー 石井敬太 伊藤忠商事社長