首都圏での物流施設開発に強み
シーアールイー 亀山忠秀 2022.10.24首都圏での物流施設開発に強み
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)
── 業界の中でどのような特徴がある会社ですか。
亀山 物流施設に特化した不動産会社として唯一の上場企業で、不動産管理を中心に、土地活用など資産活用事業を行っています。傘下に物流不動産を対象とする不動産投資信託(リート)、私募ファンドの運営を行う企業もあります。東証上場のリートで物流不動産特化型が9銘柄ありますが、その中に当社グループも入っています。
設立は2009年12月で、11~12年から施設開発を本格的に始めました。1棟全体の賃貸(マスターリース)が強みで、主に物流会社向けに施設を提供しています。当社は1346件のマスターリース物件を抱えており、うち東京近郊が約9割を占めます。管理代行(プロパティマネジメント)の物件は257件で、東京近郊が約8割と、首都圏での開発に強みを持っています。
── 業績が好調ですね。
亀山 新型コロナウイルス禍でオンライン通販や料理の宅配などのニーズが拡大し、物流の需要が多くの人に実感されるようになりました。それを受けて、22年7月期は売上高が前期比3割増、最終(当期)利益が同6割増を達成しました。26年7月期を最終年度とする5年間の事業利益(営業利益、持ち分法投資損益、のれん償却費、事業投資による損益の合計)の期中平均は86億円と前の中期経営計画から倍増を目指しています。
── 物価上昇の影響は。
亀山 鉄やコンクリートなど建築資材が上昇し、当社にも大きな影響が出ています。土地や人件費も上がっています。建築費はここ1~2年で2割近く増えました。しかし、今後もこうした値上がりが長く続くとはみていません。過度な上昇は建築計画そのものの抑制につながる可能性もあります。
── コスト増への対応は。
亀山 徐々に賃料を上げています。しかし、コスト増加分をすべて施設の賃料に転嫁できるわけではありません。物流施設の賃料は月額坪単価数千円の水準なので、上がったとしても賃料が何万円もする東京・丸の内のオフィスビルと比べると、変動幅は小さいです。
倉庫はほぼ空室なし
── 旺盛な物流需要を受けて、倉庫の建設ラッシュが続いています。良い土地を早く押さえて建設することが必要で、競争も激しいのではないですか。
亀山 当社が施設開発を始めた設立当時は競争相手は少なかったのですが、現在は総合商社や電鉄系企業も含め国内70社以上に上り、競争環境は厳しくなっています。物流需要が旺盛なので、市場全体で首都圏の中大型倉庫の空室率は2・72%(22年6月)とほぼ満杯です。昨年と一昨年は空室率がほぼゼロだったので、若干上昇したとの見方もあります。22~23年の2年間で市場全体で物流倉庫が新たに100万坪供給される見通しですが、物流の需要自体は底堅いので、空室率が低い状況はしばらく続くのではないかと思います。
── 「ロジスクエア」というブランド名で物流施設を展開しています。その特徴は。
亀山 当社の物流施設の開発シリーズのブランドとして13年から始めました。物流施設に特化した設計者とエンジニアのチームを抱えていることで、企画、設計、工事期間マネジメントを社内で一貫して行う体制ができています。国内で完成済みが20件、開発中が13件あり、合計33件を埼玉県や千葉県、福岡県などに展開しています。25~26年には京都府京田辺市で関西エリア最大規模の開発プロジェクトも計画しています。
── 特定の顧客向けに建設するのですか。
亀山 建設方法は2通りがあります。一つは物流業者などのテナントからのオーダーメード型の倉庫です。テナントの要望に沿った用地・設備を兼ね備えた物流施設を設計・建設し、定期借家契約に基づき賃貸で提供します。ただ、最近はこの方法は多くありません。汎用(はんよう)的にどのような企業や業種でも利用可能な物流倉庫を作って賃貸するケースが増えています。
── 倉庫は増え続けますか。
亀山 例えば10年先には、古い倉庫が退室するようになるでしょう。50年前の高度成長期や30年前のバブル経済期には、かなり多くが建設されました。そのため耐用年数を過ぎた古い倉庫のスクラップ・アンド・ビルドの潜在的ニーズがあり、今後は建て替え事例が多く出ると見ています。既に首都圏の倉庫は、物を置くだけではなく加工もする機能が必要になっており、建て替えニーズが強いです。
── 海外戦略はどうですか。
亀山 ベトナムとインドネシアで事業を展開しています。ベトナムはシンガポールの政府系企業との合弁でベトナムの第3の都市ハイフォンで、倉庫の建設と賃貸を始めました。タイにも拠点があります。経済成長中のベトナムは日本と比べ物流施設の賃料の上昇幅も大きく、今後、力を入れていきたいと思っています。
(構成=桑子かつ代・編集部)
横顔
Q 30代はどんな仕事をしていましたか
A 総合商社から不動産業界に転職し、しばらくしてリーマン・ショックでその会社の清算という事態に直面しました。その後に当社の設立に関わり、大変ながらも不動産業界への足掛かりができた時期でした。
Q 「好きな本」は
A 楠木建・一橋大学教授が書いた経営戦略に関する本をよく読みます。
Q 休日の過ごし方
A スポーツジムに行ったり、ゴルフの練習をしたりして過ごします。
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事業内容:物流施設の賃貸、管理、開発など
本社所在地:東京都港区
設立:2009年12月22日
自己資本:361億5700万円
従業員数:208人(単体、22年7月31日時点)
業績(22年7月期、連結)
売上高:627億3400万円
営業利益:101億8200万円
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■人物略歴
かめやま・ただひで
1974年香川県出身。県立高松高校卒業、大阪大学基礎工学部卒業。98年日商岩井(現・双日)入社。2002年7月コマーシャル・アールイー入社。10年8月シーアールイー入社、11年7月常務取締役、17年8月から現職。47歳。
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週刊エコノミスト2022年11月1日号掲載
編集長インタビュー 亀山忠秀 シーアールイー社長