戸建てからデータセンターまで

大和ハウス工業 大友浩嗣 2026.03.02

Interviewer 清水憲司(本誌編集長)

戸建てからデータセンターまで

── 大和ハウス工業はハウスメーカーでもあり、デベロッパーでもあります。どのように現在の事業を築いてきたのですか。

大友 1955年に石橋信夫が創業した時、社名の「ハウス」はプレハブの住宅を世の中に広め、「工業」は建築の工業化を目指すという思いを込めたそうです。つまり、鉄骨を活用した強い建物を早く、できるだけ安く作るという思いがありました。住宅の部材を工場で作って品質を確保し、自ら現場に運んで建てることで、製造、物流、施工、販売の一体化を考えていました。

 高度成長期には物置、戸建て住宅、集合住宅に取り組み、メンテナンスやリフォームもバリューチェーンでつなげました。やがて大型の工場や倉庫、モータリゼーションが進む中で郊外のロードサイドの店舗や事務所、その後は老人ホームといった変化するニーズを捉えて業容を広げました。

── 昨年、住友電設に対する株式公開買い付け(TOB)をした狙いは何ですか。

大友 建築工事に占める電気、給排水、空調といった設備の比率は以前、20%ぐらいでしたが、今は30〜35%に高くなる中、サブコン(設備工事会社)が決まらないと工事を受注できないという変化が起きました。当社としてもサブコンをグループに入れて技術を進化させ、効率化やコストダウンを図りたいと考え、昨年スタートを切りました。TOBは12月15日に終了し、残る株式のスクイーズアウト(強制買い取り)をした後、保有率を100%にする予定です。

── サブコンが決まらないと工事を受注できないとは?

大友 大型物流倉庫、低温倉庫、冷凍倉庫、データセンター、半導体工場といった建築では、金額ベースでも施工ベースでも設備の割合が高まっています。住友電設は当社より歴史が長く、技術者や施工に関わるサプライヤーを多く有します。今後、当社が提案や開発する仕事で、そのような資産を住友電設と共有し、将来に向けてシナジー(相乗効果)を高めることを通じ、仕事の範囲を広げられると考えています。

中計の達成前倒し

── 特徴の一つ、「LOCシステム」はどのようなものですか。

大友 LOはランドオーナー(土地所有者)、Cは建物のテナントとなるカンパニー(企業)。当社が土地所有者に建物を建てるよう提案し、テナントを紹介します。両者が合意すれば、長期の賃貸借契約を結ぶというもので、一般的には「リースバック」と呼ぶビジネスモデルです。土地所有者にとっては、土地を有効活用でき、相続税対策になることがメリットです。

 半世紀ほど前から、駅前の百貨店、アーケード商店街からロードサイドに商圏が移りました。新たな商圏を求めたユニクロ、東京靴流通センター、洋服の青山、AOKI、メガネのパリミキ、すかいらーく、デニーズといった店舗の運営会社に活用してもらいました。

── 足元の業績はどう推移していますか。

大友 2022〜26年度の第7次中期経営計画を1年前倒しして終了し、今年4月から第8次中計をスタートします。第7次中計の目標として売上高5兆5000億円、営業利益5000億円を掲げましたが、25年度に売上高5兆6000億円、営業利益5100億円の達成が見えてきたからです。海外事業の売上高を1兆円ほどに成長できたことが、中計を前倒しできた大きな要因だと思います。

── 今後の注力分野は?

大友 日本の人口動態を考えると、戸建て住宅も集合住宅も増えるとは考えにくい。そうした中でも地震に強く、断熱性能が高く、安心して暮らせる良質な住宅は少ないのが実情ですから、それらを供給することがベースになります。もう一つは、今まで建設した住宅約200万戸の顧客に向け、ライフスタイルが変わるタイミングで、リフォーム工事や賃貸、売却、売却して自分が借りるといったさまざまな提案をする取り組みを強化します。企業顧客向けには、倉庫建築のほか、トラックの待ち時間の問題など物流を取り巻く課題に対応した提案をもっと行っていきます。社会のためになることに取り組むことで、新たなビジネスが生まれると考えています。

── データセンターも伸びが期待されています。

大友 AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で需要が非常に増えています。当社は大型のデータセンターを東京や大阪という大需要地に近い場所で開発しており、今年からは大学研究所、病院、行政機関、大企業など向けの小型のデータセンター開発に取り組んでいます。小型版は地域ごとの電力や光ファイバーの状況に応じて開発可能なタイプでもあります。

(構成=谷道健太・編集部)

横顔

Q 30代はどんなビジネスパーソンでしたか

A 埼玉県でロードサイドの店舗建設を地主に提案する営業を担当していました。当時、関東では当社の知名度は低く、ビニールハウスの売り込みと勘違いされたこともありました。

Q 「好きな本」は

A 童門冬二著『小説 上杉鷹山』。財政破綻しそうな江戸時代の米沢藩主が産業を興して再建した話です。

Q 休日の過ごし方は

A ゴルフをしたり音楽を聴いたり読書したりしてリセットしています。

====================

事業内容:不動産・建築業

本社所在地:大阪市

創業:1955年4月

資本金:1626億円(2025年3月31日現在)

従業員数:5万390人(同、連結)

業績(25年3月期、連結)

 売上高:5兆4348億円

 営業利益:5462億円

====================

 ■人物略歴

おおとも・ひろつぐ

 1959年生まれ。北海道出身。北海道芦別高校卒業。84年法政大学法学部在学中に入社。16年取締役常務、20年住宅事業本部長、23年海外本部長、24年専務、25年現職。66歳。

====================

週刊エコノミスト2026年3月10・17日合併号掲載

編集長インタビュー 大友浩嗣 大和ハウス工業社長