普段のトイレを「健康の入り口」に

TOTO 田村信也 2026.02.16

Interviewer 清水憲司(本誌編集長)

普段のトイレを「健康の入り口」に

── 主力商品のウォシュレット(温水洗浄便座)が好調です。

田村 2025年11月に累計出荷台数が7000万台に達しました。1980年の販売開始以来、地道に広がり、(あるタイミングで売り上げが急増する)Jカーブを描くように成長しています。中国市場の落ち込みの一方で、米国市場での普及が影響しました。とはいえ、ここまで順調だったわけではありません。米国では「トイレの話」ということでテレビCMでの露出が難しかったり、高級ショッピングモールでの出店を断られたりすることもありました。

── どう乗り越えましたか?

田村 口コミとともに最近ではSNSを通じてウォシュレットの良さが広がったとみています。米国では日本人観光客が多いハワイのホテルなどで広がり、ロサンゼルスなどの西海岸へ波及し、さらにラスベガスやマイアミを経てニューヨークなどの主要都市へ飛び火しました。ショールームだけでなく、インターネット通販や(会員制倉庫型小売りの)コストコなど生活の動線上にも商品を展開し、アフターサービスのネットワークも整備しました。先輩が積み上げた努力がようやく実りました。

── 社長就任からもうすぐ1年です。ここまでの手応えは?

田村 就任直後は中国事業の構造改革の一環として、製造2拠点の閉鎖に伴う特別損失の計上を発表するなど非常に重たい仕事から始まりました。就任1年目は「しゃがみ込む年」でしたが、26年度以降に飛躍するために必要な準備の時間だったと考えています。

── 中国事業の立て直しは?

田村 中国国内での住宅市場のパターンが変わりました。かつては不動産は確実に値上がりするという神話がありましたが、不動産不況の中で新築マンションの建設が劇的に減り、その神話は完全に崩れました。私たちの主戦場は新築マンションへの納品でしたが、販路が一気に減りました。買い替えや住み替えが減った分、今の住宅をリフォーム(リモデル)する傾向が強まっており、私たちもリフォームにビジネスの軸足を移しています。リフォームの受注は1件ずつ開拓する必要があり、顧客のニーズもそれぞれ異なりますが、単価が上がり、利益率も上がると期待しています。

── 中長期経営計画では、30年度の「売り上げ規模1兆円以上」を掲げています。見通しは?

田村 中国の減少分を完全に回復することは難しく、達成時期はややずれるとみています。とはいえ、目標の達成が困難になったということではありません。確実に達成できる目標だとみています。

── 少子化で市場の縮小が続く日本での事業の立て直し策は?

田村 日本での売り上げの7割はリフォームが占めており、新築需要に依存しない経営体質を確立しています。一方、一口でリフォームといっても住宅とオフィスでは規模もタイプも全く異なります。また、首都圏のようにマンションが多いエリアもあれば、一戸建て中心の地域もあります。こうしたバランスに応じて営業担当社員を再配置したいと考えています。

半導体関連も稼ぎ頭

── 25年9月にはサウジアラビアに現地法人を設立しました。

田村 中東地域で高い経済成長率を誇るサウジアラビアは、大規模な公共施設やホテルの建設計画が進んでおり、さらなる経済発展が期待されています。当社は節水機能が優れた便器などをそろえており、サウジアラビアの持続可能な社会づくりに水回りから貢献していきます。プロジェクトの着工までは時間がかかるため、経営上の数字で表れるには2年程度かかるとみています。

── 25年夏には、便を自動計測する便器を発売しました。

田村 ウォシュレットに内蔵された「便スキャンセンサー」で落下中の便をスキャンし、便の形、色、量を自動で計測します。データはスマートフォンのアプリ「TOTOウェルネス」に記録され、便の状態に応じた情報が表示されます。センサーを応用すれば、今後は尿やガスなど測定の範囲を広げることもできると考えており、可能性は無限大です。1人暮らしの高齢者の見守り機能にも活用できるかもしれません。日々のトイレが健康の入り口になるよう、引き続き商品開発に取り組みます。

── 半導体製造装置向けのセラミック部品も好調です。

田村 セラミック部品の「静電チャック」は、半導体に微細な回路を作る際に、その基板材料であるシリコンウエハーを固定する役割があり、半導体製造装置の重要な部材として活用されています。静電チャックなどを含む当社の「新領域事業」の営業利益は204億円(25年3月期)で、高い利益率を維持しています。衛生陶器などで培った当社の技術は、パソコンやスマホなどの高性能化・大容量化にも貢献しています。

(構成=中西拓司・編集部)

横顔

Q 30代はどんなビジネスパーソンでしたか

A もともとエンジニアでしたが、モデルチェンジ直後の自社の商品が安売りされているのを見て奮起し、営業現場に飛び込んだこともありました。

Q 「好きな本」は

A 『真経営学読本』(福島正伸著)です。社員ともその一つひとつの言葉を日々共有しています。

Q 休日の過ごし方

A ウオーキングとラーメン、料理です。往復10キロ程度歩き、ラーメンを食べ歩きしています。料理は唐揚げの下味や衣の付け方などを研究し、改良を重ねています。

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事業内容:衛生陶器、温水洗浄便座、半導体に関わるセラミック事業など

本社所在地:北九州市

創立:1917年5月

資本金:355億円

従業員数:3万4673人(2025年3月時点)

業績(25年3月期、連結)

 売上高:7245億円

 営業利益:485億円

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 ■人物略歴

たむら・しんや

 1967年生まれ、福岡県出身。同県立東筑高校卒業後、91年九州大学大学院総合理工学部修士課程修了。同年TOTO入社。2019年取締役常務執行役員米州・欧州住設事業担当、24年取締役専務執行役員グローバル事業推進、海外住設事業担当などを経て25年4月から現職。58歳。

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週刊エコノミスト2026年2月24日・3月3日合併号掲載

編集長インタビュー 田村信也 TOTO社長