製造小売りのモデルを農業に
アグリゲート代表取締役 左今克憲 2025.04.14
消費者のニーズに対応し、農産品の生産現場から流通、小売りまでカバーする。(聞き手=和田肇・編集部)
アパレル業界で拡大しているビジネスモデル「SPA」(顧客のニーズに対応した製造・流通・小売りの一気通貫事業)を農産物・食品の世界でもやろうと取り組んでいます。SPAの「A」はアパレルの頭文字ですが、私たちはそれをフードの「F」にした「SPF」と称しています。
一つの例として、ある果物が人気が出て品薄になり、価格が高騰しているとします。しかし、産地には規格外のものが滞留している場合があります。規格外なのでコストをかけて廃棄するケースもある。そこで規格外産物を私たちが買い付け、私たちの小売店でリーズナブルな価格で販売します。産地も小売り事業者も利益になります。
規格は大切で私たちはこれを否定するものではありません。また、産地の地域活性化の取り組みとして、長崎県雲仙市や福島県国見町などの生産者と協力して、地域産の農産物などを扱うPR活動も行っています。私たちは消費者、小売り、流通、産地の皆がきちんと利益を確保できる農産物・食品事業を目指しています。
現在、小売り事業は「旬八青果店」を東京都内に8店舗(弁当店1店含む)展開しているほか、オンライン販売、卸売り事業も行っています。物流面では都内の中央卸売市場(大田市場)に参加しています。取扱商品は、青果、肉、魚、弁当、総菜、調味料など。また、農業や農産品流通への理解を深めてもらったり、そこで働くことを目指す人、事業をやろうとする人のための「旬八大学」と称する勉強会、セミナーも開催しています。
今後は生産事業にも参入
子どものころから農業や青果・食品事業をやろうと思っていたわけではありません。大学も農学部でしたが、事業と直接関係ある学科ではありませんでした。バイクで全国を旅していた時、「日本の自然はこんなに美しいのに、なぜその地域には高齢者しかいないのか」などと思っていました。
大学を07年に卒業して人材紹介・派遣や求人サービスの会社に入社しましたが、その会社を辞めて09年に起業しました。日本の農業は長い間、若い担い手が少なく衰退が続いているといわれ続け、若い人たちは情報通信やAI(人工知能)などの世界に大きなビジネスチャンスを見いだしていますが、私は農業・農産物には実は大きなビジネスチャンスがあると考えています。
私は今、小売業界で業績を伸ばしている企業のビジネスモデルを参考にすれば、農業・青果事業も生産から流通、小売りまで、誰もが利益を確保できる構造に変わっていくことができると思っています。日本の農業はこれから担い手がさらに減っていくでしょう。しかし、生産量自体は大規模化などによりそれほど大きくは減らないと考えており、今後はこの生産の分野に参入したいと考えています。
====================
企業概要
事業内容:農産物、食料品の販売
本社所在地:東京都品川区
設立:2010年1月
資本金:2860万円
従業員数:64人
====================
■人物略歴
さこん・よしのり
1982年福岡県生まれ。2007年東京農工大学農学部卒業後、人材サービス会社に入社。09年に退社後、個人事業として「アグリゲート」を創業。10年に株式会社化。42歳。
====================
週刊エコノミスト2025年4月22日号掲載
左今克憲 アグリゲート代表取締役 製造小売りのモデルを農業に