三方よしのコーヒーを日本へ
GOOD COFFEE FARMS代表取締役 カルロス・メレン 2025.02.17
コーヒー豆の生産者が貧しい暮らしを強いられている現状を変えようと、自転車動力の脱穀機を開発。貧困と環境問題解決の一助になっている。(聞き手=永野原梨香・ライター)
グアテマラなどの小規模生産者のコーヒー豆を直接、仕入れて販売しています。「モンテス・デ・マリア農園」(150グラム、税込み2000円)、「ラス・マロンチャス農園」(150グラム、税込み1900円)など、販売するコーヒー豆には農園名を記載しています。自社の店舗販売や通販のほか、日本各地の約200のコーヒー店や焙煎(ばいせん)所にも卸しています。輸入する豆の量は年間50〜70トン。
私たちの商品は、生産者、消費者、地球の三方にGOODです。大規模生産者は多くの小規模生産者からコーヒーチェリー(コーヒーの木にできる果実)を低価格で購入し、まとめてパルパー(脱穀機)でパルピング(脱穀)します。完成したコーヒー豆は、大規模生産者の商品として輸出される。利益は大規模生産者の取り分が大きく、小規模生産者の取り分は少ない。そこで、脱穀のすべを持っていない生産者に私の開発した自転車動力のパルパーを使ってもらい、その後、当社が公正な価格で買い取ります。
一般的に用いられているエンジンで動く脱穀機は大量の水を必要とする仕組みになっています。その水は豆の持つうまみを流すだけではなく、水質汚染の原因にもなっています。自転車式の脱穀機は燃料も水も電気も不要。消費者は、おいしく本当にサステイナブルなコーヒーを飲むことができます。
2011年に高級コーヒーブランド「ダークスコーヒー」を立ち上げた際、フェアトレードなどと銘打っている豆であっても、小規模生産者にとってはフェアではない仕組みになっていると知り、大きなショックを受けました。
一念発起し、自転車式の脱穀機の開発にあたりました。学校で教育を受けていない生産者や、インフラが整っていない場所に住んでいる生産者も多い。とにかく、ローテクで使いやすいことが重要でした。この自転車式の脱穀機は機械に豆を入れてこぐだけでよい。1回こぐと1分ほど回転し、1時間で1トンの豆を脱穀する能力があります。エンジン式の脱穀機だと1時間で300〜500キログラムほどです。
現在、連携している生産者は250以上。自転車式の脱穀機は全部で20台ほど。現地の農園から農園へ、軽トラックなどに載せて運びます。
お茶やビールにも
グアテマラから18歳の頃に来日して以降、多種多様な仕事に携わりました。ダークスコーヒーを立ち上げた際は、グアテマラのメディアにも紹介されました。なにせ、日本は高級コーヒーのトップ市場でしたから、注目されました。
生産者の取り分を多くすれば、当社の利益が少なくなるのでは、と思う人もいるでしょう。ここは、マインドセットが必要です。栽培・収穫から販売まで関わっているので中間マージンがかからず、商品展開も自由にすることができる。他社とのコラボレーション、コーヒーチェリーの果皮や果肉の部分「カスカラ」から作ったお茶やビールまで、ビジネス展開は無限です。
ですが、売り上げよりも重要なことはフェアであること。今後も三つのGOODから離れないようにしようと思っています。
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企業概要
事業内容:サステイナブルなコーヒーの生産・販売
本社所在地:東京都中央区
設立:2020年2月
資本金:3405万2193円
従業員数:10人
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■人物略歴
Carlos Melen
1981年、グアテマラ出身、18歳の時に来日。いくつかの職を経て2011年にRKコーポレーションを設立し、ダークスコーヒーブランドを作る。その後、グアテマラに戻り精製処理工場開発をスタート。自転車を使用した独自の精製処理が現地でうわさになり、多くの農家にノウハウを教え、17年ダークスコーヒークオリティシステムを立ち上げた。19年1月、GOOD COFFEE FARMSに名称変更。20年2月にGOOD COFFEE FARMSを設立。
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週刊エコノミスト2025年2月25日・3月4日合併号掲載
カルロス・メレン GOOD COFFEE FARMS代表取締役 三方よしのコーヒーを日本へ