猫の身になって考えた猫用品

クロス・クローバー・ジャパン代表取締役兼ネコプロダクトデザイナー 太野由佳子 2025.11.10

 猫にとって本当に使い勝手の良い商品は何かを徹底的に考える。“商品開発部長”は猫自身だ。(聞き手=和田肇・編集部)

「猫目線のモノづくりで困りごとを解決」をテーマに、ネコ用品ブランド「nekozuki(ねこずき)」を展開しています。自社開発の商品を中心にインターネット通信販売に特化しています。現在、年商1億円ぐらいでしょうか。

 自分で開発しようと思ったきっかけは、「エリザベスカラー」(動物が自らの傷口などを舐(な)めないよう首の周りを覆うカバー)を自分の愛猫に付けなければならなくなった時に、従来品だと猫にとっては硬く、重くて、かなり負担だった。それで自分で作ってみようと思い、柔らかく、軽く、猫の骨格にも合うものを開発しました。お客さまの声も聴きながら、これまで約30回の改良を重ねています。

「爪切り用目隠しマスク」は、猫の爪切りの大変さを何とかしたいという思いからです。目隠しマスクを付けると猫は自分が隠れていると思って安心するみたいですね。爪研ぎシートは必需品ともいえますが、長持ちするようなものを開発しました(優れた品質に定評のある岩手県産の南部赤松使用)。南部鉄を使った猫用の食器も作りました。エリザベスカラーはこれまで約7万枚、爪切り用目隠しマスクは約4万枚売れました。 

 猫の介護用品にも力を入れています。猫の寿命は30年前に比べて約3倍の15.8歳ぐらいに延びていて、昔は感染症や交通事故、猫同士のけんかなどで亡くなるケースが多かったが、最近は腎臓疾患などの病気で亡くなる例が増えています。病気治療で猫に皮下注射をする場合、従来は“おくるみ”のような袋に入れ、猫を押さえていましたが、かなり暴れてしまう。それで猫をスムーズに押さえられるよう衣服形式のおくるみを開発しました。このほか、簡単にできる猫の尿検査キットなども開発しています。

スーパーで働きながら会社経営

 猫は子どもの頃から好きで医療系の会社に勤める傍ら、休日はボランティア団体で保護猫の活動などに参加していたのですが、好きな猫を仕事にしてみたいと思い起業しました。スタートアップというと、エンゼル投資家や自治体の支援制度などを活用する場合が多いと思いますが、当時の私は何も分からず、自分の貯金で会社を立ち上げ、岩手県盛岡市で店を開きました。お客さまが全然来ない。夜はスーパーでレジ打ちの仕事をしていました。しばらくして電子商取引(EC=インターネット通信販売)に活路が見いだせるのではないかと思い、商品も自分で作ってみようと考えました。

 そこで工場を訪れて「こういうものを作ってください」と頼みましたが、誰も相手にしてくれない。何回も足を運んでようやく作ってもらえるようになりました。実際に愛猫に試しながら、じっくり時間をかけて、長い時は6〜7年かけて商品化していきます。

 当社はネット上で獣医さんなど専門家を招いて、猫の習性を学ぶなどの発信をしています。こうした活動もしながら、今後も飼い主のための猫用品ではなく、猫のための猫用品を作っていきたいと考えています。

====================

企業概要

事業内容:猫の飼育関連商品の企画・販売

本社所在地:盛岡市

設立:2005年6月

資本金:1000万円

従業員数:4人

====================

 ■人物略歴

ふとの・ゆかこ
 1977年岩手県生まれ。2000年に専門学校卒業後、医療システム会社に5年勤める。05年に猫用品販売のクロス・クローバー・ジャパンを設立。グッドデザイン賞を7回受賞。

====================

週刊エコノミスト2025年11月18日号掲載

太野由佳子 クロス・クローバー・ジャパン代表取締役兼ネコプロダクトデザイナー 猫の身になって考えた猫用品