資産形成商品を第三の柱に

アフラック生命保険 古出真敏 2026.02.09

Interviewer 清水憲司(本誌編集長)

資産形成商品を第三の柱に

── アフラックが日本初のがん保険を発売して50年超になりました。最近の保険市場の動向を教えてください。

古出 共働き世帯や単身世帯の増加、結婚しても子どもを持たない選択など家族の形態が多様化しています。そうした中で、一家の大黒柱に何かあった時のための死亡保障から、長生きや健康リスクの備えへと重心が移っており、人口減少の中でも当社のコアビジネスである、がん保険や医療保険の領域は伸びています。長生きするうえでは健康寿命とともに「資産寿命」を延ばすニーズも高まります。保険会社ならではの商品でニーズに応え、資産形成を三つ目のコアビジネスにしていきます。

── 2025年3月期は、売上高にあたる保険料等収入が前期比2・4%増の1兆3265億円になりました。

古出 がん保険、医療保険、資産形成でそれぞれ新商品を投入し、いずれも手応えを感じています。特に資産形成商品「ツミタス」は非常によいスタートが切れました。

 個人の金融資産のポートフォリオを考えると、手元資金や流動性の高い資産と(株式などの)ハイリスク・ハイリターン資産の間に「長期的に運用したいけれどあまりリスクを取りたくない」という領域があります。生命保険会社として長期の資産運用に相当のノウハウがありますから、元本リスクなしで魅力的な利回りを提供できます。ポートフォリオの一角として、ちょうどよい商品として評価されていると考えています。

── 長期債を中心に金利が上昇し、生保業界の中には運用方針を変更するケースも出ています。

古出 金利上昇は新規で投資する観点からは運用利回りが上昇するので好ましい状況ですが、当社はこれまで債券中心の運用をしてきましたから、保有債券の評価下落という課題があります。ただし、経済価値ベースでみた資産サイドと負債サイドのバランスは取れており、金利上昇の影響は限定できています。会計上の影響は残りますが、これも会社として大きな影響がない程度にはコントロールできていると考えています。

── 業界では代理店への過剰な便宜供与の結果、特定の商品が推奨されて「顧客本位」から外れていると問題になりました。

古出 当社も金融庁から報告徴求命令を受けました。便宜供与はその時々のビジネス判断として行ったものですが、結果として代理店側がどのように受け止め、顧客への販売にどのような影響を与えたか、当社としてモニタリングが足りていませんでした。社内体制を強化するとともに、金融庁の新しい監督指針に沿いながら、業界のベストプラクティスを代理店とともにつくっていきます。

年功序列を廃止

── 年功序列を廃止する人材マネジメント改革に取り組んでいます。ときには「降格」も伴うわけですが、どんな狙いですか。

古出 時代が大きく変わる中で、企業が持続的に成長するには、一人ひとりの人材に持てる力を最大限に発揮してもらうことが重要です。ポジションごとにその職務を定義したうえで、年齢や性別、社歴など年功序列的な考え方を一切排除して、そのポジションに最も適した人を配置することにしました。ポジションが下がると報酬も下がりますが、これを「降格」とは考えていません。職務が小さいポジションに移ったとしても後々の異動で再び大きなポジションに就くこともあります。

 一定の年齢になれば皆が一定のポジションになる、いわばレールに乗っていくのではなく、一人ひとりが自らのキャリアを考えていく。ポジションごとにリクワイアメント(要件)を公開していますから、将来就きたいポジションに対して今の自分のスキルとのギャップがどこにあるのかが分かります。そのギャップを埋めるために、研修など人材育成策も同時に強化しました。特に経営人材の育成に向けて社内大学をつくり、一橋大学のビジネススクールと連携してプログラムを作成しました。

── 女性管理職比率が30%を超えました。

古出 当社の女性社員比率は今も昔も約50%と高く、業界で初めて女性役員が誕生した歴史もあり、女性が活躍する会社だと認識していましたが、10年ほど前にデータを確かめると9%ほどに過ぎず、非常に驚きました。そこから女性社員をターゲットにした人材育成を強化し、長時間労働といった男性中心的な働き方も徹底的に見直しました。30%はもちろん最終ゴールではありません。女性の力をもっと引き出せるような取り組みを進めていきます。

 女性管理職の増加は男性社員にもプラスです。男性間にありがちな同質性プレッシャーが減り、職場での意思決定の質が上がることによって、組織全体の活性化に結びつくと考えています。

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 長銀時代は国際金融機関や北米大手企業の円債発行や米国での訴訟を担当しました。ところが長銀が破綻して38歳でアフラックに転職。波乱の時期でした。

Q 「好きな本」は

A 米作家ジョン・グリシャムの『法律事務所』です。米国留学時に法律事務所で研修した経験があり、リアリティーを感じながら楽しんでいます。

Q 休日の過ごし方

A 読書と音楽鑑賞。ジャズとクラシックが好きです。

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事業内容:生命保険業

本社所在地:東京都新宿区

創業:1974年11月

資本金:300億円

従業員数:4836人

業績(2025年3月期、単体)

 保険料等収入:1兆3265億円

 最終利益:4029億円

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 ■人物略歴

こいで・まさとし

 1960年生まれ。東京都出身。千葉県立東葛飾高校卒業。84年東京大学法学部卒業、日本長期信用銀行入行。米コーネル大学ロースクール卒業。98年アフラック入社。2006年退社し、金融機関2社に勤務後、08年アフラック再入社。副社長などを経て18年現職。65歳。

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週刊エコノミスト2026年2月17日号掲載

編集長インタビュー 古出真敏 アフラック生命保険社長