交換レンズが好調、高収益
タムロン 桜庭省吾 2025.01.27
Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)
交換レンズが好調、高収益
── タムロンとはどんな会社なのか、創業の経緯も含めて教えてください。
桜庭 当社は設計、製造、販売まで手掛ける光学機器の総合メーカーです。中心はレンズ交換式カメラのレンズですが、産業用レンズも開発していて、グローバルに展開する企業です。1950年11月に「泰成光学機器製作所」として創業しました(70年4月から現社名)。今年11月に創業75周年を迎えます。創業者の新井健之氏が、「レンズ製品メーカーとして成長する」と立ち上げました。光学技術に特化したことが特徴です。
── 産業用の光学機器とはどんな製品でしょうか。
桜庭 監視カメラのレンズやFA(ファクトリー・オートメーション)用です。監視カメラを始めたのが約40年前。コンビニや銀行、街頭などに設置されているものです。当社の事業ポートフォリオは三つあり、「写真関連」と「監視&FA」、三つ目が車載用や医療用などの「モビリティ&ヘルスケア」です。
── 2024年12月期業績は売上高890億円(前年比24・6%増)、営業利益196億円(同44%増)の予想です。好調の要因とは。
桜庭 24年前半は円安基調で推移してプラス影響はありましたが、為替の影響を除いても3セグメントですべて好調に推移したことです。特に写真関連は自社ブランドの主力機種の新製品が好調でした。それに加えて交換レンズのOEM(相手先ブランドでの生産)の受注も非常に好調でした。
── タムロンの交換レンズの強みは何ですか。
桜庭 コストパフォーマンスです。カメラメーカーによる「純正レンズ」に比べ、価格性能比においてユーザーに有利な製品を提供していることに加えて、仕様もユニークなラインアップをそろえています。
売り上げ好調なのは、大口径の標準ズームレンズです。焦点距離28〜75ミリのF(絞り値)2・8のレンズです。あとは高倍率ズームです。28〜200ミリのF2・8〜5・6もロングラン商品です。23年に発売した70〜180ミリの「A065」も好調です。
── スマートフォン(スマホ)が普及した影響でレンズ交換式カメラが以前に比べると販売台数は下がっています。一方で、ミラーレスカメラの市場が成長していますが、交換レンズの今後の需要をどうみていますか。
桜庭 カメラボディーと同様に増加傾向は続くと思います。付加価値が高まっているので、台数ではなく金額ベースでの増加です。近年はSNS用途で写真ユーザーが増えてきています。スマホで撮る写真、動画の画質に満足できない人がミラーレスカメラを購入する傾向にあります。ボディーから無線でスマホにデータ転送できるので、使い勝手も向上しています。
中期目標は引き上げ検討
── 監視&FA、車載用や医療用が好調な要因とは。
桜庭 監視&FAは、レンズユニットにセンサーと制御用電子基板を付けた「カメラ・モジュール」の新製品の投入効果もありました。車載用は、自動運転用の白線追従(白線を検知して車線中央を走行する操作を支援する機能)とか、衝突防止目的のレンズの需要が好調です。医療用も製品のラインアップを増やしていて大幅増収できました。
── 監視・FAと車載・医療の成長戦略は。
桜庭 監視・FAでは、高精細や高耐久性へのニーズに加えて、可視光だけでなく目に見えない赤外光領域までに対応できる技術を当社は有しており、これからも伸びていくだろうとみています。26年12月期には1・5倍(23年12月期比)の成長を目指しています。
車載用は、自動運転化が進展しますし、将来は車1台に10台以上のカメラが搭載されるとみていますので、今後も需要は高まっていくと考えています。医療用は、特にがんを検査するための蛍光フィルター(微弱な蛍光を効率的に検出する)やノッチフィルター(特定の波長を除去し、それ以外の波長の光を透過)があり販売を増やしていきたいと考えています。
── 中期経営計画では、最終年度の26年12月期に売上高830億円、営業利益153億円を掲げていますが初年度の24年度の見通しで目標を超過します。
桜庭 2月に通期決算発表しますが、そのタイミングも含めて最終目標値について上方修正する方向で考えています。
── 総還元性向60%(配当総額+自社株買い総額を最終利益で割る)を掲げています。
桜庭 資本政策の見直しが中期経営計画の大きなテーマでした。自社への投資だけでなくステークホルダーへの還元も両輪で取り組んでいこうということで進めた結果です。従業員に対しても業績に見合った形でボーナスを含めて還元しようと考えています。
(構成=浜田健太郎・編集部)
横顔
Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか
A 青森県弘前市の工場で生産技術を担当していました。30代の終わりに本社に戻り、画質向上に不可欠な「ガラスモールド非球面レンズ」の開発を手掛けました
Q 「好きな本」は
A 『伝え方が9割』(佐々木圭一著)です。行動の模範にしたいと読みました。東野圭吾さんの著作も好きです。
Q 休日の過ごし方
A ガーデニングで特にバラの栽培が好きです。あとはゴルフです。
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事業内容:写真用交換レンズ、監視用、産業用などのレンズの設計、製造、販売
本社所在地:さいたま市
創業:1950年11月
資本金:69億2300万円(2023年12月末)
従業員数:4604人(23年12月末、連結)
業績(23年12月期、連結)
売上高:714億2600万円
営業利益:136億700万円
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■人物略歴
さくらば・しょうご
1958年生まれ。青森県立弘前高校卒業、弘前大学理学部卒業。1981年タムロン入社、2005年執行役員光学開発本部長、08年上席執行役員、14年取締役、16年3月副社長を経て23年8月から現職。青森県出身。66歳。
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週刊エコノミスト2025年2月4日号掲載
編集長インタビュー 桜庭省吾 タムロン社長