自分で考えるアートスクール
メイビス代表取締役CEO 青山絵美加 2025.01.05
決まったカリキュラムのない子ども向けアートスクールがある。講師は子どもがやりたいことのサポート役だ。(聞き手=和田肇・編集部)
横浜市のJR根岸駅近くで、子ども向けのアート、デザイン教室「アートルームルミエール」を開いています。教室はビルの中にあり、1回のレッスンで10人から15人入れるくらいのスペースがあります。2018年に教室を開き、生徒は現在100人ほど。小学生を中心に高校生もいます。講師は約20人で、全員が芸術大学や美術大学の卒業生、現役学生です。
レッスン時間は1回120分で、会費は週1回の月4回プランで月額1万7600円(税込み)、週2回の月8回プランが3万800円(同)です。絵画は水彩や油絵、デッサンなどはもちろん、タブレットを使ったデジタルイラストなどがあり、絵画だけでなく、木工工作、裁縫、3Dプリンターを使った工作、立体造形などもやっています。他に理科の実験を楽しむサイエンススクールも開催しています。
普通の絵画・アート教室は、決まったカリキュラム、プログラムがありますが、うちのスクールにはないのが大きな特徴です(サイエンススクール除く)。子ども自身が自分の興味や目的に合わせて好きなことができ、講師はそれをサポートします。やりたいことが浮かばない子もいるので、その時は講師がアドバイス。また、保護者から教えてほしい内容の要望もあり、要望に沿ったレッスンも可能です。
大人向けにもイベント
カリキュラムを作らなかったのは、自分自身の経験からです。私は出身が山梨県。祖父が1級建築士、父が肖像画家だったので、幼少期は身近にアートがあるような家庭でした。私も自然に美術に興味を持ちましたが、学校にはカリキュラムがあって、生徒は決められたことをやるばかり。そうした環境にどうしてもなじめず、地元の高校に進学後、その学校を中退しました。
経済的理由などから美術関係の学校に行くことはできず、高校中退後は東京に出て、フリーランスとして独学しながらデザインの仕事をしました。結婚後の2015年に娘が生まれた時、娘には「自分で気づいて、発見する。与えられるのではなく、自分で生み出していく」教育を受けさせたいと考えましたが、周囲のアート教室にはやはりカリキュラムがある。それなら自分でカリキュラムのないスクールを作ろうと思ったのです。

ただ、開業資金の調達は大変でした。金融機関に米国のアート教育事情を説明したりしてようやく理解を得られ、教室はインターナショナルスクールが多い横浜市で開くことに決めました。25年からはオンラインレッスンも始めたほか、大人向けにアートへの理解を深めるイベントなども時々開催しています。子どもの教育では大人の理解も重要ですからね。
今の子どもたちは作られたもの、コンテンツ化されたもので遊ぶ機会が多く、自ら作り出す機会が減っていると感じています。学校でも子どもが自ら問いを立てて答えを探す「探求学習」が増えていますが、アートには自分なりのものの見方や哲学が反映されます。今後はクリエーティブな発想ができる人材が必要とされる中、アートの役割は重要になると考えています。
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企業概要
事業内容:子ども向けアート教室の運営、アートの普及啓発事業
本社所在地:横浜市
設立:2009年11月
資本金:3500万円(資本準備金含む)
従業員数:16人
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■人物略歴
あおやま・えみか
1991年山梨県生まれ。高校中退後、東京でデザインの仕事に携わる。出産、子育てを契機に2018年にアート教室を開設。34歳。
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週刊エコノミスト2026年1月13・20日合併号掲載
青山絵美加 メイビス代表取締役CEO 自分で考えるアートスクール
