「本物の日本」を海外へお届け
ICHIGO代表取締役CEO 近本あゆみ 2022.05.30近本あゆみ ICHIGO代表取締役CEO 「本物の日本」を海外へお届け
日本ならではの製品の詰め合わせを海外に向けて提供。お菓子や雑貨を通して、日本の文化や歴史を届けている。
(聞き手=白鳥達哉・編集部)
日本の製品を海外の人たちに届ける越境EC(電子商取引)サービスを運営しています。
サービスは4種類、大手メーカーのお菓子や飲み物、カップラーメンなどを扱う「TOKYO TREAT」、地方の和菓子や日本茶を扱う「SAKURACO」、ポケモンなどのキャラクター雑貨を扱う「Yume Twins」、コスメ製品を扱う「NOMAKENOLIFE」──です。
価格はサブスクリプション(月額)形式で、契約期間によって変わりますが、TOKYO TREATを例にすると、1年プランで月額32.5ドル(約4100円)、月に1度、専用の箱に15~20種類の製品を詰め合わせて届けます。
「本物の日本」を海外に届けることをコンセプトにしていて、製品を選ぶのは必ず日本人が担当します。ただ、価値観の押し付けにならないよう、マーケティングは海外の人間が担当し、海外の人に受け入れられるものを厳選しています。
また、「桃」や「桜」など、月ごとにテーマを決めた上で製品をセレクトしており、各製品の特徴やテーマについて解説した自社制作の小冊子も一緒に発送します。これらを通して、日本の文化や歴史を知ることができるのも特徴の一つです。
会員登録者数は無料会員も含めれば180万人、これまで累計210万箱以上を発送しました。米国が利用者の7割を占めますが、アジアや中東、アフリカなど、180の国と地域に利用者がいます。
地方自治体とコラボ
起業に興味を持ったのは大学生のころ、同級生が学生のためのサービス事業を立ち上げ、それに誘ってもらったことです。
いつかは起業をしたいという思いで、大学卒業後はリクルートに入社、共同購入でさまざまなクーポン券を安く購入できるECサイトの立ち上げに参画しました。ある時、美容室のクーポン券を販売すると、普段は地元の人しかこない美容室でも、外の地域からお客さんが来るようになりました。商圏が広がっていくのを目の当たりにして、ECサービスにとても興味を持つようになりました。
また、当時は2010~11年ごろで、日本のインバウンド(訪日外国人旅行)需要が増えている時期でもありました。そこで思い付いたのが海外向けのECサイトです。国内向けだとすでに楽天やアマゾンなど大手が存在していましたが、海外向けは大きな競合がいなかったため、自分のような若手でも勝負できると確信し、会社を立ち上げました。
今後は、インバウンド需要の回復に向けて、自分たちが関われるサービスを作っていこうと考えています。また、最近は神奈川県などの自治体や地方のメーカーと協力し、オリジナル製品の開発も手がけています。来年にかけて複数の自治体とコラボレーションする予定で、海外の人に日本のさまざまな地域の魅力を知ってもらうとともに、コロナ禍でダメージを受けている地方の助けになる懸け橋として成長していきたいです。
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企業概要
事業内容:サブスク型越境ECサイトの運営
本社所在地:東京都港区
設立:2015年8月
資本金:1000万円(21年10月1日現在)
従業員数:約80人(22年3月現在)
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■人物略歴
ちかもと・あゆみ
1984年兵庫県生まれ。2009年早稲田大学卒業後、リクルートに入社。「ホットペッパービューティー」の営業、共同購入型クーポンサイト「ポンパレモール」の立ち上げに従事。15年、前身企業となるムーブファストを設立後、21年ICHIGOに改称。38歳。