企業活動の価値を多面的にチェック
Valuufy CEO兼共同創設者 カイル・バーンズ 2025.05.07
企業活動で生み出される価値を数値化し、企業の健康状態を可視化するサービスを開発、世界での普及を目指している。(聞き手=松村真友・毎日みらい創造ラボ)
近年、企業活動が消費者や社会にもたらす価値が問われています。これまで最も大切なステークホルダーは株主で、企業の評価は利益の多寡で決まりました。しかし、それでは社員や消費者、自然環境との調和が失われ、会社の持続可能性は低下すると考えています。
外国出身の私たちにとって、日本の商文化は新鮮でした。世界で200年以上続く企業の半数以上は日本にあります。長い歴史を持つ企業に、なぜ日本企業が多いのか。「真の商人は、相手もうまくいき、自分もうまくいくことを願うものである」と説いた石田梅岩の教えや、近江商人の理念としてうたわれている「三方よし」に、その秘密があると思っています。私たちは「三方よし」を膨らませ、七つのステークホルダー全てにとって持続可能なビジネスを目指す「七方よし」を提唱することにしました。
企業活動において大切な七つのステークホルダーを、顧客・従業員・ビジネスパートナー・企業・自然環境・株主・社会と定義し、それを定款にも盛り込みました。世界でもかなり珍しい会社だと思います。
SDGsに関する取り組みをアピールする会社は多くあります。しかし、ある分野でいい取り組みをしていても別の分野で大きな負荷をかけている例があるなど、企業活動の善しあしを判断するには多面的に見なければなりません。あらゆる分野をチェックし明確に比較ができるようにしたのが「ValuuCompass™」です。
「ValuuCompass™」は世界に45ほどある枠組みをまとめた包括的なもので、27テーマ1200の測定項目、さらに持続可能性を高めるための81の目標を設定しました。目標に対する達成度を数値化し可視化することで、国や業界を越えて企業の健全度を比較できます。
課題改善の提案も
「ValuuCompass™」を導入した企業には課題改善のノウハウも提供して売り上げにしていきたいと考えています。個別な企業向けのアドバイザーになるSaaSを提供する計画もあります。米国のIT大手がパイロット導入を決めています。
時価総額3兆円以上の東証プライム市場上場企業は2027年3月期からサステナビリティー情報を開示しなければなりません。取り組みが遅れている企業も多く、「サステナビリティー2026問題」といわれています。現状の企業側の課題は、開示義務が単なるコストにしか見えていないことにあるでしょう。サステナブル情報を集めて開示するには膨大なコストがかかりますが、その意味を理解していなければ、企業には負担としか感じられないわけです。
「ValuuCompass™」は、企業にとって開示ツールとして役立つことに加え、他社との比較で見渡すことができ、改善すべきことは何かを把握できます。改善過程を開示すれば、会社の信頼性向上にもつながるでしょう。
開示をためらうスコアが出たとしても改善していけばいいのです。それはPRがうまい、マーケティングにたけているということとは別で、社会と共存するために必要な取り組みです。京都から世界へとサービスを拡大していきます。
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企業概要
事業内容:企業の社会・環境影響を定量化するフレームワークの開発・提供
本社所在地:京都市下京区
設立:2024年6月
従業員数:8人
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■人物略歴
フィリップ・須貝(研究責任者兼共同創設者・左)
1969年、米国出身。同志社大学バリュー研究センター所長、同志社大学ビジネススクール大学院マーケティング教授。2015〜17年には米スタンフォード大学で客員教授。
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■人物略歴
マルコ・ケーダー(COO兼共同創設者・右)
1972年、ドイツ出身。25年以上にわたりグローバル市場でのビジネス変革を推進してきたマーケティング戦略家。社会学の視点を持ち、Google、BMW、Johnson & Johnsonなどのグローバル企業のデジタル変革を導いた。
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■人物略歴
カイル・バーンズ(CEO兼共同創設者・中央)
1979年、米国出身。グローバル日系メーカーでESG推進統括本部を設立、営業とマーケティング、サステナブル製品開発、ステークホルダーエンゲージメントなどESG戦略の実施などが専門。
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週刊エコノミスト2025年5月13・20日合併号掲載
カイル・バーンズ Valuufy CEO兼共同創設者 企業活動の価値を多面的にチェック