蓼科高原の復活に全力を注ぐ

帰ってきた蓼科代表取締役  矢崎公二  2024.01.04

 長野県の代表的な高原リゾートの復活へ、さまざまな活性化策を打ち出している。

(聞き手=稲留正英・編集部)

 長野県蓼科(たてしな)高原にある蓼科湖を拠点に、観光まちづくり会社「帰ってきた蓼科」を運営しています。戦前からの由緒ある高原リゾート蓼科の活性化が目的で、新たな観光施設を展開する推進母体となっています。昨年4月には、湖畔に情報発信拠点「蓼科BASE(ベース)」をオープンしました。レストラン、パン店、バー、日帰り温泉、観光案内所、宿泊所も備えた施設で、昨夏の多い日には、1日3000人が訪れる人気スポットとなりました。

 蓼科は、戦後、八ケ岳の雄大な森林と湖、豊富な温泉資源を武器に「首都圏の避暑地」として大きく発展。しかし、バブル経済崩壊後は観光客が減少し、直近の利用客数はピーク時の半分の年間150万人にまで落ち込んでいました。

 そうした状況に危機感を抱き、活性化策を実現する受け皿として設立されたのが「帰ってきた蓼科」です。2017年5月の発足後、1年をかけ各種のリサーチを実施し、再生のためのマスタープランを作成しました。核となった考えが、「蓼科湖を人と物と情報が集まる蓼科観光エリアの中心地とする」というものです。

 蓼科の抱えていた課題の一つが、バブル経済の崩壊以降、資金不足や事業者の高齢化により観光施設への再投資が滞り、かつて存在した宿泊施設や商業施設の多くが廃業してしまったこと。また、「団体旅行から個人旅行へ」という旅行ニーズの変化にも必ずしも対応できていませんでした。一方で、蓼科には、八ケ岳西麓(せいろく)にある1万1000軒の別荘の住人という、他の観光地にはない強みがあります。戦前から3世代、4世代にわたって避暑に訪れる人々は、蓼科の強固なファンを形成しています。

文化の交流サロンも復活

「蓼科BASE」は湖を懐に抱く高原リゾートの良さを国内外に発信する

 こうした蓼科の強みと課題の分析を経て、当社は18年から本格的に再生計画の実行に乗り出しました。第1弾となったのは、同年7月の湖畔にある老舗旅館・キャンプ場のリノベーションと、焼き肉バルのオープンです。宿泊施設をロッジ(山小屋)風に改装、キャンプ場には屋外サウナ小屋なども新設しました。焼き肉バルは、団塊ジュニアを中心とした3世代を対象に、地元の蓼科牛を提供しています。

 第2弾が、道の駅の誘致です。国土交通省と茅野市に働きかけ、20年7月に「道の駅ビーナスライン蓼科湖」としてオープンしました。普通乗用車120台が駐車でき、湖でボートをこいだり、湖畔のレストランやアイスクリーム店、アウトドアショップを訪れる人々でにぎわっています。第3弾が「蓼科BASE」です。蓼科湖の近くには、白樺湖、女神湖と標高の高い湖が点在しています。当社はこれらの湖と連携する「レイクリゾート構想」を提唱しており、湖を懐に抱く高原リゾートの良さを国内外に発信する拠点としても活用します。

 蓼科は戦前から詩人、歌人や画家など多くの文化人が訪れる交流サロンでもありました。蓼科BASEの開設を契機に、こうしたサロンも復活させられれば、と考えています。

「蓼科BASE」は湖を懐に抱く高原リゾートの良さを国内外に発信する

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企業概要

事業内容:地域再生事業、観光開発、宿泊施設・温泉施設等の運営を通じた地域活性化の実現

本社所在地:長野県茅野市

設立:2017年5月

資本金:1120万円

従業員数:8人(パート、観光協会スタッフ含む)

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 ■人物略歴

やざき・こうじ

 1959年長野県出身。慶応義塾大学卒業後、毎日新聞社入社。仙台支局や『サンデー毎日』編集部を経て、2009年長野4区選出の衆議院議員に。17年5月「帰ってきた蓼科」を設立し、代表取締役に就任。

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週刊エコノミスト2024年1月9日・16日合併号掲載

矢崎公二 帰ってきた蓼科代表取締役 蓼科高原の復活に全力を注ぐ