就活過程を評価してスカウト
ABABA代表取締役社長 久保駿貴 2024.12.16最終面接まで進む実力を財産とし、求人側、学生側双方を幸福にする。(聞き手=北條一浩・編集部)
就職活動をする大学生と、良い人材を採用したい企業のいずれにもチャンスの広がる仕組みを作りたいと考え、2020年にABABAを設立しました。創業のきっかけは、4歳からの親友が就活でうつ状態になったことにあります。最終面接に落ちたショックがひどく、2週間音信不通になりました。後で聞いたところでは「今までの努力がすべて無になり、またゼロからやり直しだと思い絶望した」とのことでした。
そこで私が考えたのは、就活の過程と実力を評価し、生かすシステムを作ることでした。社名は親友の彼が最終面接に落ちた際に漏らした「アババ……」といううめき声に由来して(笑)、同名のプラットフォームを作りました。
「ABABA」は、最終面接に残ったことのある就活生だけが登録し、利用できるスカウト型サービスです。登録の際は、最終面接まで進んだ企業名と選考フロー、プロフィール情報を入力してもらいます。最終面接まで進んだかどうかは、企業からの不採用通知などから確認します。すると後日、登録者の実績を評価した企業から選考フローをカットしたスカウトが平均25通ほどLINEに届く仕組みです。
今年11月段階で、広告も何もしていない状態で全国で4万5000人もの学生が登録し、1700社ほどの企業に導入されています。企業側の視点に立てば、最終面接まで進む実力を持った優秀な学生のみの情報にアクセスできることで、エントリーシートや1次面接などの選考過程をスキップできるわけです。
学生の登録は無料、企業からは利用料が年間10万円、採用が決まった際には成功報酬として1人当たり65万円をいただいています。平均90万円とされる学生1人の採用コストと比較して格安だと自負しています。
早期化、長期化で疲弊
私は岡山大学4年の時に、「第17回キャンパスベンチャーグランプリ全国大会」に出場し、経済産業大臣賞を受賞しました。その時に話した内容が「ABABA」の構想です。すでに法人は設立していたため、漠然とした願望ではなく、「本気でやるつもりだ」と評価されたのかもしれません。
ここ数年、就活のスタート時期はどんどん早くなる一方、採用が決まる時期は同じですから、つまりは長期化もしています。学生側の売り手市場ゆえ、「早めに動かなくては」と企業側は躍起になり、学生もぼんやりしていては戦えないと早くから参入する。そうして疲弊してしまい、誰も幸せになっていないのが現状です。
当社ではこの24年9月から「REALME(リアルミー)」という新サービスを始めました。これはAIに就活データを学習させ、そのAIから面接を受けることで、志望企業の内定を獲得できる確率を出そうという試みで、いわば模擬試験のような仕組みです。
親友のうつ状態という個人的な動機から始めたサービスですが、今後は社会的な使命として、「ABABA」「リアルミー」をもっと知ってもらう努力をし、早期、長期化の悪い流れを止めたいと考えています。
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企業概要
事業内容:最終面接まで進んだ経験のある就活生が利用できるスカウト型サービス「ABABA」の運営
本社所在地:東京都目黒区
設立:2020年10月
資本金:4億9388万円(資本準備金含む)
従業員数:60人(業務委託、アルバイト含む)
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■人物略歴
くぼ・しゅんき
1997年兵庫県生まれ。2017年に関西大学環境都市工学部に入学し、19年に岡山大学理学部に編入。20年、ABABAを設立し、代表取締役社長に。現在も岡山大学大学院社会文化科学研究科博士前期課程に在学しながら、同社経営のほか東京MX「堀潤 Live Junction」のコメンテーターも務める。
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週刊エコノミスト2024年12月24日号掲載
久保駿貴 ABABA代表取締役社長 就活過程を評価してスカウト