デジタルな街の不動産屋に

ファンタステクノロジー代表取締役 國師康平 2022.03.31

國師康平 ファンタステクノロジー代表取締役 デジタルな街の不動産屋に

 都心のワンルームから地方の空き家まで、投資物件を手広く扱う。その狙いとは……。

(聞き手=市川明代・編集部)

 不動産を「売りたい人」「買いたい人」「活用したい人」をクラウド上のプラットフォームでつなぎ、売り買いの円滑化を進めるサービスを運営しています。不動産の所有者、投資家、実需で不動産を求めている人、不動産仲介業者、リフォームの工務店など計10万人が会員登録しています。

 主力は投資用の区分ワンルームマンションの仲介ですが、現在力を入れているのは「空き家」のマッチングです。空き家を処分したい人には、その物件には投資用のニーズがどの程度見込めるか、販売価格の相場はいくらぐらいか、といった情報を提供します。空き家を含む中古戸建てを探している人向けには、「FANTAS repro」というサイト上に、物件情報とともに基本的なリフォームを施した場合の購入価格などを提示し、好みの物件が見つけられるようにしています。

リフォーム前(左)、リフォーム後(右) ファンタステクノロジー提供

 空き家の情報は世の中にほとんど出回っていません。空き家の売買価格は安く、不動産仲介料もあまり見込めないため、不動産業界にとってうまみがないのです。

 空き家問題を解決する目的で、2015年から空き家再生事業をスタートしました。18年から空き家物件を買い取ってクラウドファンディングでリノベーションのための資金を募り、再販するサービスを開始しました。買い手がつかず、持ち主が処分に困っているような空き家でも、物件探しをしている人の目に触れる機会さえ増やせば、再生につながる可能性が高まります。そこで、ビジネスモデルを買い取りからマッチングに切り替え、FANTAS reproの運営を始めたのです。

最初は女性専用セミナーから

 大学卒業後、大手不動産会社に就職。ワンルームマンションの営業担当として5年間勤務しました。不動産業界の営業マンは手当たり次第に電話をかけ、顧客情報も手帳で管理しているような時代でした。せっかく良い物件を扱っているのに営業効率が悪く、「不動産会社はうさんくさい」というイメージが広がっていることにも疑問を持っていました。

 創業は10年。少しずつスマートフォンが普及し始め、パソコンを持っていない人にもデジタル広告が広がり始めていました。デジタルの手法で、ワンルームマンションを売る側にも買う側にも便利で使いやすい仕組みを作ろうと、古巣の同僚5人で起業しました。

 最初に力を入れたのは「マネカツ」という女性専用の資産運用無料セミナーです。当時、資産運用セミナーは男性向けのものが多く、安定した職に就いている女性を中心に会員が増えていきました。そこからマンション投資につなげていったのです。

 プラットフォームを作った背景には、不動産市場の裾野の広さを生かす狙いもあります。いまはワンルームマンションの投資家でも、ゆくゆくは親が住んでいる一軒家を相続し、買い手を探すことになる可能性もあります。不動産のことならどんな情報でも提供できる、デジタルな「街の不動産屋」になるのが目標です。

 そのために力を入れているのが顧客サービスです。デジタルといってもベタな付き合いをしなければ満足度が下がっていく。こまめなセミナー開催やアフターフォローで選ばれる企業を目指します。

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企業概要

事業内容:不動産、金融領域におけるマッチングプラットフォーム事業

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2010年2月

資本金:1億円

従業員数:約150人

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 ■人物略歴

くにし・こうへい

 1982年岡山県生まれ。2005年に近畿大学理工学部卒業後、木下工務店に入社。約5年間、不動産営業実務や管理職を経験。10年に現FANTAS technology(ファンタステクノロジー)を創業。40歳。