「好き」で自信をつくり、つながる
WOODY代表取締役社長 中里祐次 2025.09.29
好きなことを自由にやれれば、自信が付き、友達もできる。発達障害や不登校の子どもたちの「好き」に全力で向き合うサービスがある。(聞き手=位川一郎・編集部)
「Branch」という、発達障害や不登校の子ども向けの居場所のサービスを運営しています。オンラインの「Branch home+(ホームプラス)」とオフラインの「Branch room」の二つがあり、利用者はそれぞれ約300家族、約30家族。小学生の利用が中心です。特徴は、子どもの好きなこと、やりたいことができる場であること。「『好き』で自信をつくり、『好き』で社会とつながる」がビジョンです。保護者さんの支援を厚くしているのも特徴です。
「Branch home+」は通話アプリのディスコードを使います。月に2回か4回、メンター(助言者)と子どもが1対1で遊ぶほか、子どもが手を挙げて作った「部活」や、保護者さん同士が発達障害や不登校に関する悩みや課題を話し合うコミュニティーがあります。「Branch room」は東京・代官山にあるフリースクールです。スタッフと1対1の環境で、自由に遊びながら「好きなこと」を発見します。
オンラインの「部活」も
Branchに来る子どもの多くは、半年、1年も家族以外と話していなかったり、発達の特性から学校でずっと怒られ自信がなかったりする状態です。しかし、最初は声を発するのが難しくても、好きなことはしゃべってくれるんです。例えばキャラクターとかアニメとかゲームとか。僕らが教えるのではなく、子どもに教えてもらうスタンスで接しています。「あんなに生き生きしゃべるのを久々に見ました」と話す保護者さんもいます。
オンラインの「部活」の数は150ほどあります。マイクラ、フォートナイト、ポケモンなどのゲームが半分ほどで、他に生物部、鉄道部、お菓子部、「かわいいもの部」などもあります。嫌いな勉強のことは全然話せなくても、好きなことなら知識も意見もあり、話したり書き込んだりできるので、自然と友達ができるんです。
起業して最初は電子書籍などを手がけましたが、長男が小学校1年生の時に発達障害の診断を受けたのがきっかけで、Branchを立ち上げました。長男は一時不登校になったのですが、当時レゴブロックにはまっていて、東京大学の学園祭に行ってレゴ部を見たのがすごく楽しかったようです。それを株主に話すと、「中里さんはそういう事業が向いている」と言われました。発達障害の子を持つ保護者さん100人ほどにインタビューして、ニーズがあると分かりました。
当初のサービスはオフラインでしたが、新型コロナで人が集まれなくなってオンラインのサービスを始め、今はそちらが中心です。オンラインでは自分の顔を隠せるし、声をオフにすることもできる。人と遊びたいけど怖いという子どもにとって、コミュニケーションの手段を自分でコントロールできるのは良い点です。
不登校の児童・生徒は増え続けています。学校のノルマやルールが増えるから、それに合わない子どもが増えるんじゃないでしょうか。子どもの心の健康を何より大事にしてほしいと思います。今後、「Branch home+」を広げ、保護者支援も強化したい。Branchの子どもが大人になった時の働き方支援も考えています。
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企業概要
事業内容:インターネットサービスの開発・運営
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2013年11月
資本金:5400万円
従業員数:50人
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■人物略歴
なかざと・ゆうじ
1982年東京都目黒区生まれ。2007年早稲田大学卒業、サイバーエージェント入社。ソーシャルゲームのスマートフォン対応などに携わる。13年「WOODY(ウッディ)」設立。16年に発達障害や不登校の子ども向けサービス「Branch(ブランチ)」を開始。17年、東京都渋谷区代官山に「Branch room」をオープン。コロナ禍の20年6月、オンラインでのサービスをスタート。
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週刊エコノミスト2025年10月7日号掲載
中里祐次 WOODY代表取締役社長 「好き」で自信をつくり、つながる