トレカの真贋をAIで判定する
コレクテスト代表取締役 岩田翼 2024.09.30投資対象として注目されるトレーディングカード。AI(人工知能)を使い真贋を判定するサービスを手掛ける。(聞き手=永野原梨香・ライター)
トレーディングカード(トレカ)はスポーツ選手やアニメのキャラクターなどが印刷されたカード。収集や交換のほか、カードを出し合い勝負を決めるゲームを楽しみます。トレカの1次流通市場は2022年時点で2349億円と、20年の1225億円から2倍近く成長している一方、偽物も多く出回っています。私は子どもの頃からのトレカ好き。以前、偽物をつかんだことがあり、このような被害に遭う人が減るようにと23年、AIを使った真贋(しんがん)判定を始めました。
高精細な画像処理ができる機械に大量のトレカの画像を読み込ませ、AIで画像を分析し真贋を見極める仕組みを作りました。カードが本物かどうかをAIが分析した後、さらに専門スタッフがチェックします。AIが偽物らしいと判断しても、汚れなどのせいかもしれない。ですが、スタッフがチェックした結果、やはり本物だったことは、今のところありません。また、折れ曲がっていないか汚れていないかなどカードの状態の良しあしで、市場での評価が左右されますので、専門スタッフがカードの奇麗さを評価します。
鑑定後には1枚ずつ、QRコード付きのケースに入れます。ORコードをスマホで読み込むと、そのトレカの現在価格が表示される仕組みです。価格は主要なトレカ関連サイトなどから算出。AI画像認証と現在価格の表示機能とで、特許を取得しています。
現在、8月下旬から取り扱いを開始した「プロ野球カードゲーム ドリームオーダー」「ポケモンカードゲーム」「Magic: the Gathering」「ONE PIECEカードゲーム」「遊戯王オフィシャルカードゲーム」など10種類を扱っています。ポケモンカードゲーム、ONE PIECEカードゲームが人気で、これらの鑑定依頼数が多いですね。ホームページからの申し込み後、トレカを当社に郵送してもらい、鑑定して10日前後で返送します。鑑定料金は1枚当たり税別2980円~(送料別)です。
トレカは数枚入りで200円前後から、コンビニや家電量販店などで販売されています。発売前から、ネット記事などで高額予想のカードが話題になり、1パック買ってそのカードが入っていたら、数百円が数万円以上になることもあります。
トレカは安定資産
トレカ市場が急拡大した理由は二つ。短期的な理由ではコロナ禍で出控えが起きた際、家の中で遊べ、資産形成にもなると注目が高まったこと。中長期的な理由では、ポケモンもワンピースもアニメ開始から20年以上も人気が続いているため、資産価値が下がりにくい「安定資産」とみなされたことがあるでしょう。
日本のアニメのキャラクターが印刷されたトレカは各国で人気化しています。最も高いものは「ポケモンイラストレーター」で、数年前に7億円ほどで売買されています。十数年前は100万円ほどで売られていましたが……。買わなかったことを後悔しています。
設立して1年半。世界で愛される鑑定会社になりたいです。
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企業概要
事業内容:トレーディングカードのAI鑑定サービス事業
本社所在地:東京都大田区
設立:2023年3月
資本金:4921万円
従業員数:非公開
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■人物略歴
いわた・たすく
1983年東京都生まれ。2008年、一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了後、旭硝子(現AGC)入社。退社後、リクルートなどで新規サービス立ち上げや経営戦略等を経験。5歳よりトレーディングカードを偏愛し何十万枚も所持。20年に個人で「神社仏閣カード」を立ち上げる。23年3月、コレクテストを設立し、代表取締役に就任。
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週刊エコノミスト2024年10月8日号掲載
岩田翼 コレクテスト代表取締役 トレカの真贋をAIで判定する