「乾電池」で簡単に高齢者を見守り
ノバルス代表取締役 岡部顕宏 2022.01.24岡部顕宏 ノバルス代表取締役 「乾電池」で高齢者を見守り
高齢者の一人暮らしが急増する中、市販の乾電池を活用して、簡単に取り組める高齢者見守りサービスを考案した。
(聞き手=和田肇・編集部)
市販の乾電池を活用した高齢者の見守りサービスを提供しています。私たちが開発した単3形乾電池サイズのケースに単4形電池を入れて、それをリモコン機器の電池を入れる部分(単3形)に、普通に電池を挿入するようにセットします。単3形サイズのケースには、極薄の電子回路が組み込まれていて、リモコンの電源スイッチを入れると、それを感知して自動的に電波を発信します。その電波は「ブルートゥース(近距離無線通信)」に対応していて、近くのスマートフォンに自動的に転送され、さらに、そのスマホから別のスマホにデータが自動的に転送されます。(挑戦者2022)
当社のサービスの利用者は、この単3形電池ケースを購入して、高齢者宅のテレビやエアコン、照明のリモコン機器、トイレの操作パネルなどの電池としてセットします。そして、高齢者と見守る方(親族など)は、専用の「見(木)守りアプリ」を高齢者と見守る方のそれぞれのスマホにダウンロードしてもらいます。
見守る方は、アプリを通じて、対象の高齢者が何月何日に、どのリモコン機器を何回使用したのか、リアルタイムで知ることができます。チャット機能も付いているので、高齢者と見守る方の会話もできます。
これらのシステムによる高齢者の見守りサービス事業は、2019年から開始しました。価格は極薄の電子回路を組み込んだ単3形電池ケースが3278円(税込み)。アプリを利用した見守りサービス料が、月額1078円(同)です。これまで単3形電池ケースを数万個販売しました。
「どのボタン」かも分かる
セイコーに勤めていた時に、国内の時計業界では初となる「BT-Watch(スマホと腕時計をブルートゥースで接続する規格)」の策定などの仕事に携わりました。そうした中で、ソフトウエアとハードウエアを組み合わせた製品開発、IoT(インターネットと製品の融合)事業をやりたいと思うようになり、今の会社を創業しました。セイコー時代に腕時計のような精密機器、細かい電波の分析などに関わっていたことが、今の事業につながったのだと思います。
今後はこうした技術開発をさらに進めていきたいです。電池ケースも単3形だけでなく、単4形電池に対応したケースの開発を進めています。単4形ケースの場合、そこに入れる電池は単6形になります。また、電源のオン・オフだけでなく、どのボタンを押したか識別できる技術も開発中です。ボタンによって電波は微細に異なるので、識別できれば、見守る高齢者の状況がより詳しく分かります。高齢者の認知機能の低下を把握できるようなサービス事業も検討中です。
ユーザー層もご家庭向けだけでなく、不動産業界向けの展開にも力を入れています。不動産業界では、孤独死の問題などを理由に、一人暮らしの高齢者が入居することに難色を示すケースがあるようです。当社の高齢者見守りサービスを活用すれば、物件のオーナーやマンション管理会社、入居する高齢者の方々にとって、リスクの軽減に貢献できるのではないかと考えています。
企業概要
事業内容:バッテリーとワイヤレス通信をパッケージ化したコネクテッド・バッテリー関連事業
本社所在地:東京都千代田区
設立:2015年4月
資本金:3億1000万円(資本準備金含む)
従業員数:18人
■人物略歴
おかべ・あきひろ
1969年愛知県生まれ。アスキー、スクウェア(現スクウェア・エニックス・ホールディングス)、セイコーインスツルを経て、2015年にノバルス設立。52歳。