託児サービスをどこでも手軽に
Simplee代表取締役 諏訪実奈未 2025.07.28
子育てを理由に仕事や旅先での体験をあきらめない社会に。そのためにオンデマンドでシッターを派遣するサービスを展開する。(聞き手=小山由宇・毎日みらい創造ラボ)
シッターを派遣するチャイルドケア(託児)サービスを提供しています。主な提供先は、子連れの訪日外国人や企業、コワーキングスペースなどで働く人たちです。私たちが法人と契約し、利用者の要請に応じシッターを派遣します。システム上で、外国語対応を含め、顧客の要望に合ったシッターをマッチングでき、個人からの直接申し込みにも対応しています。ケース・バイ・ケースで対応していますが、基本の利用料金は1時間4000円から。60人超のシッターと派遣契約を結んでいます。
これまでに観光ホテルや旅行代理店などと提携を進めたほか、福利厚生の一環として導入してくれた大企業もあります。法人側がシッティングルーム(託児室)を常設するのは大変ですが、私たちのサービスを使えば必要な時にホテルの客室や会議室を託児室にでき、手軽に託児サービスを利用できるので喜ばれています。
起業したのは、私自身の体験に基づきます。子育てをしながらの生活には多くの制約がつきまといました。当時勤めていた大手コンサルティング会社を時短勤務にせざるを得なくなったり、出張に行けなかったり。プライベートでは沖縄旅行でダイビングを体験できなかったり。コト消費やトキ消費が制限されると、日本の経済活動にもマイナスだと感じました。
その現実を変えるため、エンジニアとしての知識を生かして、親がシッターとマッチングできるアプリを作りました。短時間でプレゼンするビジネスコンテストで2022年6月に優勝して投資家がつき、同年に会社設立、23年に起業したという流れです。
当初は自分と同じような親、社員の子育てと仕事を両立させたい企業をメインターゲットと考えていましたが、途中で「私みたいな思いをするインバウンド客も多いんだろうな」と気づきました。
インバウンドに注力すると予想は当たりました。広告を打ったわけでもないのに、どんどんインバウンドのユーザーがつく。ホテルや旅行代理店経由ではなく、直接の問い合わせも多い。やはりコト消費したい人が多いのでしょうね。東京ディズニーランドや富士急ハイランドへの同行シッターのニーズもありました。
インバウンドに大きな需要
「すごく助かった。ハッピーだ」「もう一度利用したいよ」という声をいただいています。インバウンド需要は今後も増えます。今では売り上げの7割がインバウンド、3割が国内の企業などです。
24年の訪日外国人旅行者数は3687万人でしたが、30年の政府目標は6000万人です。現状は首都圏中心の事業展開で、京都や北海道でも始めましたが、早く全国規模に広げたいと考えています。より効果的なマッチングを可能にするため、AI(人工知能)による全自動化を進めていきたいです。
Simpleeという社名には「子育ての複雑さをシンプルにしたい」という思いを込めました。私が目指すのは、チャイルドケアがインフラ化された社会です。「子育ても挑戦も楽しむ社会」「コト消費、ビジネスをあきらめない社会」を実現します。
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企業概要
事業内容:訪日観光客向け多言語チャイルドケアと予約システム運用、法人向けのオンデマンドチャイルドケアとシステム運用
本社所在地:東京都港区
設立:2022年8月
資本金:50万円
従業員数:6人
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■人物略歴
すわ・みなみ
1994年、茨城県出身。2017年、慶応義塾大学総合政策学部卒業。在学中に女性向けマーケティング事業「キャンパスラボ」を創業。米系コンサルティング会社を経て、22年にSimplee設立。育児と自己実現の両立に関する登壇多数。
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週刊エコノミスト2025年8月5日号掲載
諏訪実奈未 Simplee代表取締役 託児サービスをどこでも手軽に