部活を「損」から「武器」へ
部活メディア代表取締役 髙松新平 2024.06.24就活に不利とされてきた部活を逆に価値に変え、企業とマッチングする。(聞き手=北條一浩・編集部)
社名のとおり、大学の部活動を支援する事業を行っています。同名のウェブサイト(https://bukatsumedia.com/)では、全国の大学のさまざまな部活を掲載し、どの大学にどんな部活があるのか、検索できるようにしています。また自分たちの部活を知ってほしい学生は、大学から公認を得ていれば、どんな部でも無料で活動内容を掲載することができます。
高校生が大学を選ぶ際の参考としてサイトを見てくれているケースが多いのですが、同時に弊社としては、これから社会に出ていく学生と、良い人材がほしい企業をうまく結びつけたいという意図があります。
部活をやっていると就職活動のタイミングが限られてしまうという声を学生から聞くことがあります。やっていない学生に後れを取ってしまう。私から見れば、部活に励んでいる学生は大会や試合などを通じて対外的に多くの人々と交流し、目標に向かって努力する経験を積んでいます。協調性もあります。ところが学生自身が自分たちの価値に気づいていないんです。その価値を、ぜひ自覚してもらいたい。
弊社では、それぞれの部活に担当者が付いて、部を訪問して取材したり、情報収集を蓄積する活動を行っています。またクラウドファンディングで活動費を集めるノウハウや、集めてからの使い方などもアドバイスします。そして企業側には、部活のスポンサーになってもらうべく働きかけていきます。スポンサーになってくれる企業とは1年契約ですが、1年だけ支援してすぐに自社に人材を採用できると思わないでほしい、できれば学生が1年生の時から3年くらい続けてその成長ぶりを見てほしいと訴え、そのためできるだけ低価格に設定しています。
広告ではなく、直接支援を
私は高校時代にバスケットボールをやっていました。キャプテンなのに試合には出られず(笑)、裏方でやっていこう、スポーツトレーナーをめざそうという思いで大学では医療を学び、鍼灸師の資格を取りました。医療機関で4年ほど働き、その後、もっと広く社会を知りたいと住宅メーカーに勤め、ある時期から縁あって人材ビジネスの世界に入ることになりました。
そこでつくづく感じたのが、日本の就活のまずさです。実際、日本では離職率3割というラインは長年変わらないままです。この旧態依然とした世界を変えたいと思いました。
企業に対しては、媒体に求人広告を出すよりも、直接学生のスポンサーになったほうが効果的だと説得しています。例えば学生は地域のお祭りに参加したり、あるいは華道部や茶道部といった文化系の部活なら、高齢者の介護施設に行って入居者と一緒に花を生けるなどの活動をし、企業がその活動資金を提供する。こうした地域連携やボランティアに学生と企業が共に参加することで、社会的な認知が広がり、企業にも新たな採用の道が開かれるはずです。
従来は「損」だと思われていた部活を、貴重な努力と経験を積むことのできた「武器」に変えることができるはずだ。そう考え、私たちは活動を続けています。
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企業概要
事業内容:大学の部活動支援事業、新卒採用支援事業
本社所在地:東京都千代田区
設立:2023年2月
資本金:1000万円
従業員数:23人
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■人物略歴
たかまつ・しんぺい
1982年奈良県生まれ。関西鍼灸短期大学(現関西医療大学)を卒業し、鍼灸師の資格を取得。医療機関、住宅メーカーに勤務ののち、人材ビジネスの世界に。2023年に大学の部活動支援の観点から就活とつなげる事業を考案し、ストレートに「部活メディア」と名付けた会社を設立。
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週刊エコノミスト2024年7月2日号掲載
髙松新平 部活メディア代表取締役 部活を「損」から「武器」へ