子育て家庭の夜ご飯を楽しく
マルチダ代表取締役 丸山由佳 2025.09.01
自分の子育てで一番の課題だった夜ご飯作り。「当事者こそが課題を解決すべきだ」と起業した。(聞き手=永野原梨香・ライター)
子育て家庭に向けた家庭料理のテークアウトサービス「マチルダ」を手掛けています。毎週月~金曜に750種類以上のメニューを組み合わせた日替わりの献立を利用者に届けています。料理の負担の軽減以上に、日常の楽しみになる夜ご飯を届けたい。季節感も大切にしているので、今年8月には骨に見立てたゴボウをハンバーグで包んだ「マンモス肉風ハンバーグ」など、夏祭りの屋台をイメージしたメニューを出しました。
現在の利用数は1日に3000~4000食ほど。注文・支払いはLINEで完結する仕組みになっています。まずはLINEで友達登録。注文画面から「ファミリーセット」(およそ大人2人+子ども1人分)、「おひとりセット」(大人1人分)のプランを選択し、注文したい曜日や受け取り場所を選択します。
週1回ファミリーセットを注文する場合は1セット当たり2600円。週5回、同セットを注文する場合は同2400円。支払いはクレジット決済です。
また、当日は午後1時まではキャンセルも、当日注文もできます。キャンセル分は当日注文分に充てるシステムを構築しているので、食品ロス率は1%台ほどに抑えられています。注文・支払い方法や在庫管理のシステムは自社で開発しました。
セントラルキッチン増強
受け取り場所は、「ステーション」と呼んでいるワゴンです。午後5時ごろになると、錦糸町マルイ前や京王井の頭線の永福町駅前など、提携先の一画にステーションを設置していて、そこにある専用端末にスマホの注文画面をタッチし、スタッフからご飯を受け取る仕組みです。
現在のステーション数は東京都内を中心に35カ所。2024年に急激に増えました。大きな要因は製造体制の増強です。東京・亀戸の800食弱を製造できるセントラルキッチンに加えて、23年10月には東京・辰巳で最大5000食が製造可能なセントラルキッチンの稼働を開始しました。
娘が未就学児のころ、仕事に育児に追われ、夜ご飯を考えて作ることが大変でした。そこで、作り置きや宅食など、次から次に食のサービスを利用してみました。それらすべて、娘は最初のうちは食べるのですが、いつの間にか食べなくなってしまう。
そこで、気づきました。「ご飯作りが大変」という私の課題は解消したけれど、「今日の夜ご飯は何かな?」と、楽しみにしている娘の思いは置き去りになっている、と。それなら、家族皆が満足できるサービスを作ろうと21年1月に起業しました。さまざまな形で食に興味を持ってもらいたいので、体験活動にも力を入れています。夏休みには協力会社5社と、子ども向けのみそ玉作り教室などを開催しました。
将来はステーション数を300にまで増やしたい。子どもは皆、『マチルダは小さな大天才』(ロアルド・ダール著)の主人公、マチルダのようにエネルギーがいっぱいです。「食」を切り口に、子どもたちが無邪気に、思う存分、力を発揮できる街と社会を作っていきたいです。
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企業概要
事業内容:家庭料理のテークアウトステーション「マチルダ」の開発及び運営
本社所在地:東京都江東区
設立: 2021年1月
資本金:1億円
従業員数:160人
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■人物略歴
まるやま・ゆか
1990年、東京都出身。2013年9月、九州大学経済学部卒業後、米国で1年間インターン。14年10月ユーザベースに入社し、経済情報プラットフォーム 「SPEEDA」法人営業を担当。21年1月マチルダを設立。
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週刊エコノミスト2025年9月9日号掲載
丸山由佳 マチルダ代表取締役 子育て家庭の夜ご飯を楽しく