大規模病院向けシステムの業界標準

ファインデックス 相原輝夫 2023.10.23

大規模病院向けシステムの業界標準

 Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)

── どういった経緯でシステム開発会社を始めたのですか。

相原 大学卒業後、システムエンジニアとして3年ほど勤めました。退職後、ある病院の院長に出会ったのが転機でした。その病院は大型コンピューターを会計にしか使っておらず、処理能力を持て余していました。そこで、個人事業主として業務を自動化するソフトウエアを提案して開発しました。その後、日本医師会の仕事を請け負うため、親戚の休眠会社を引き継いだのが当社の源流です。それからは電子カルテを手掛け、今の主力製品「クライオ」につながりました。

国立大学病院の8割が導入

── 大規模病院でのシェアが高いそうですね。

相原 国立大学病院の8割で当社の何らかのシステムが動いています。大規模病院は内視鏡や超音波検査装置などさまざまな検査装置を使いますが、検査結果のデータは装置のメーカーごとに設置したサーバーで管理していました。システム運用が複雑化し、コストが高くなっていました。2003年にリリースしたクライオは一つのサーバーで全ての検査データを扱えるシステムです。その後、機能を拡充し、医師が診察室で参照・入力する電子カルテの機能を持つようになっています。

── 23年12月期の中間期決算は当初予想を上回り、通期も増収増益を見込む要因は何でしょうか。

相原 一つは、コロナ禍で医療機関の投資意欲がシステムに向いていなかったのが戻ってきたこと。もう一つは、新しいシステム「メディカルアベニュー」が評価されていることです。医院の患者はアプリやウェブで予約を変更し、オンライン診療を受けられますが、大規模病院はできていませんでした。メディカルアベニューを導入すると、アプリが病院に入った患者を自動的に感知し、診察室を案内し、診察後は自動的に会計します。患者は受付に立ち寄ったり、支払いするために待ったりする必要はありません。

── 文書管理システムも手掛けているそうですね。

相原 以前から大規模病院向けの文書管理システム「ドキュメーカー」を販売しています。医師が電子カルテに入力した情報を分類して管理し、検査データを電子カルテに引用するといった機能があり、重宝されています。今や大規模病院では文書管理システムのデファクトスタンダード(事実上の標準)になりました。地方自治体や公的企業向けに機能を拡充した「ドキュメーカーオフィス」を16年にリリースしました。

医療機器にも進出

── 新製品「GAP」はどんなものですか。

相原 21年に販売を始めた「視線分析型視野計」という分野の医療機器です。GAPを使うと、150年ほど前から世界中の眼科医が使っている視野検査装置より患者にとって楽で、検査結果が正確になります。今のやり方は、緑内障の疑いがある患者が暗室に入り、視野検査装置の画面に映し出される光が見えたらボタンを押すというもの。検査にかかる10分ほどの間、患者は眼球を動かさないように指示されます。一方、GAPの場合、患者はスキーのゴーグルのようにGAPをかぶるだけです。GAPに内蔵されているカメラと映像装置によって、患者が光を見えたかどうかを判断します。暗室は必要なく、患者は窮屈な思いをせずに済みます。

── 医療機器に進出した理由は何ですか。

相原 10年以上前、アジアの大規模病院から当社の医療システムを導入したいという引き合いがありました。しかし、検討した結果、導入は無理だと判断しました。日本とは医療制度が違うため必要とする機能が異なる上、システム障害に備えて現地でサポートすることが難しいと分かったからです。一方、医療機器は国が違っても使われ方も必要な機能も変わりません。それが医療機器の開発に踏み切った理由の一つです。

── これからも医療機器に力を入れますか。

相原 GAPのハードウエアと新たなソフトウエアを使って軽度認知障害を早期発見する装置を京都大学、筑波大学と共同研究しています。今までにない方法で早期発見を目指しています。うまくいけば24年に薬事申請したいと思っています。

── 海外で展開する予定はありますか。

相原 GAPが欧州連合(EU)の医療機器規則に適合するとの確認を22年に得られたので、今年から本格的に販売する予定です。また、豊田通商とセコムの子会社がインド・ベンガルールに設立した病院でクライオを試験導入してきました。先ほど申し上げた課題を解消し、本格的に展開できるよう取り組んでいます。

(構成=谷道健太・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 親戚の会社を引き継いだ当初は銀行から借り入れるしかなく、資金繰りには苦労しました。

Q 最近買った物は

A 中古車のアウディを買いました。10年ほど前、乗りたかったRS5というモデルです。

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 一番好きな趣味が仕事でした。新製品を研究開発するため、クラブ活動のように夜中まで取り組んでいました。

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事業内容:システム開発事業

本社所在地:東京都千代田区

設立:1985年1月

資本金:2億円

従業員数:307人(2023年4月1日、連結)

業績(22年12月期、連結)

 売上高:45億円

 営業利益:10億円

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 ■人物略歴

あいばら・てるお

 1966年愛媛県出身。同県立松山北高校卒業。愛媛大学を卒業後、四国日本電気ソフトウェアを経て、93年パイオニア四国に入社。翌年、社長に就任。2014年、現社名に変更。57歳。

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週刊エコノミスト2023年10月31日号掲載

編集長インタビュー 相原輝夫 ファインデックス社長