顧客企業のDX支援で再成長へ

BIPROGY 斉藤昇 2025.09.08

Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)

顧客企業のDX支援で再成長へ

── 日本ユニシスから2022年に社名を変えた理由は何ですか。

斉藤 当社の大株主だった米コンピューター大手ユニシスが06年、当社の持ち株を売却しましたが、その後も長く社名を変えていませんでした。当社のメインフレームコンピューター(大型汎用(はんよう)機)を使う大企業の顧客からサービスの継続性に不安感を持たれないようにしたいという思いからでした。ただ、メインフレームの販売が減り、オープン系システムやクラウドコンピューティングの時代になったことや、日本ユニシスの社名のままだと海外展開が難しいといったことがあり、ICT(情報通信技術)で社会課題を解決する企業としてふさわしい社名にしたいという思いが膨らんできました。

 そこでコロナ禍の中、社内にプロジェクトチームを作って、新しい時代にふさわしい社名を考える中で、ブルー、インディゴ(藍)、パープルなどの七色を示す英語の頭文字からBIPROGYと命名しました。これからの時代、人種や個性などが多様な人たちが一緒になって社会課題を解決していくような企業になりたいという思いを込めています。

スーパーの人手不足を解決

── 24~26年の中期経営計画の業績目標を今年4月に上方修正した理由はどんなものですか。

斉藤 デジタルトランスフォーメーション(DX)を重視する顧客による積極的な投資のモメンタム(勢い)が働いたのは、非常に大きいですね。新規や既存の顧客から受注が増えたのは、価値の高い提案を認めてもらえたことが積み重なったためだと分析しています。例えば、当社は地方銀行や信用組合の顧客に勘定系システムを動かすメインフレームをリリースしてきました。最近は顧客の地盤地域で人口が減る中、「オープン系システムを使ってスマートフォンのアプリを素早く導入できるようにしませんか」と提案しています。

 また、地方で頑張っているスーパーマーケットは人手不足や売れ残った商品の廃棄ロスといった課題を抱えています。それを解決するサービスとして、「電子棚札」を提案しています。商品名や値段を記した棚札を電子化したものです。スーパーの従業員は閉店してから翌朝までものすごい時間をかけて、棚札を取り換える作業をしています。棚札の記載内容を電子的に表示し、コンピューターで価格改定などをできるようにすることで作業を大幅に減らせます。将来的には、コンピューターが各商品の在庫状況を把握し、ある商品を値下げして売り切るといった判断が一瞬で可能になると思い描いています。

 やはり人手不足を解決するにはICTしかないと思います。企業の中にも、同じように考えて、そこに投資するという判断をするところが多く、当社にとって追い風が吹いています。

── 人工知能(AI)が普及し始めています。どんな取り組みをしていますか。

斉藤 当社はAI自体を作るのではなく、AIを使って何をするかを提案しています。小売業向けには、商品を発注するタイミングや個数をAIが判断できる「AIオーダーフォーサイト」という仕組みがあります。

 大手鉄道事業者の顧客向けには、トンネルなどの鉄道設備の写真を撮ると、その画像を基にAIが劣化具合を判断できる仕組みを提供しました。これから、顧客企業がDXのレベルをもう一段上げていく時、AIはものすごく力を発揮すると思います。

スタートアップの刺激

── 経団連のスタートアップ(新興)企業に関する役職に就かれています。

斉藤 19年にスタートアップ委員会の企画部会長になりました。日本経済を活性化するにはスタートアップの力が必要と考え、経団連が設けた組織です。米国ではシリコンバレーで(創業10年以内で未上場、企業価値が10億ドル超の)「ユニコーン企業」が続々と誕生しているのを見れば、重要性は明らかです。経団連がバックアップして、そういう企業を増やそうとしています。大手や中規模の企業とスタートアップをマッチングさせ、集う機会を作っています。

 当社は17年、「キャナルベンチャーズ」というベンチャーキャピタルを設立し、私が初代社長を務めました。その経験を経団連でお話しする機会があったことから声がかかりました。スタートアップの人たちと会って話すと、すごく刺激があってとても参考になります。社内のメンバーと一緒に会いに行くことで、何か新しいことをする時、自社だけでやるのではなく、スタートアップにいい技術があったらそれを使うというオープンイノベーションができるようになったのは大きな変化だったと思います。

(構成=谷道健太・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 顧客のビジネスを理解し、何が必要かを考えて提案するといったことを身に付けたと思っています。

Q 最近買ったもの

A 縁があってセイコーグループの社外取締役になってから時計が好きになって、最近、腕時計を買いました。

Q 休日の過ごし方

A ピックルボールという新しいスポーツを試してみたら意外と面白く、やっています。米国のスタートアップ企業の人から紹介されたのがきっかけです。

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事業内容:ITシステム、ITソリューションサービス

本社所在地:東京都江東区

設立:1958年3月

資本金:54億円(2025年3月31日現在) 

従業員数:8362人(同、連結)

業績(25年3月期、連結)

 売上収益:4040億円

 営業利益:390億円

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 ■人物略歴

さいとう・のぼる
 1961年東京都出身。80年東京都立上野高校卒業。86年立教大学経済学部経営学科卒業。同年入社。2004年日本ユニシス(現当社)産業流通第二事業部長、12年ビジネスサービス事業部長、16年取締役常務、20年代表取締役専務などを経て24年現職。64歳。

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週刊エコノミスト2025年9月16日号掲載

編集長インタビュー 斉藤昇 BIPROGY社長CEO