林ゆめの教えて!エコノミスト 関西の若手起業家2人が登場

放送局:MBSラジオ 放送時間: 2022年3月19日(土)17:00~17:25 MC:林ゆめ 解説:秋本裕子・週刊エコノミスト編集長
MCを務めた林ゆめさん
MCを務めた林ゆめさん

女優・モデルとしても活躍し、現在もIT企業に勤めている林ゆめさんと、経済専門誌「週刊エコノミスト」(毎日新聞出版)の秋本裕子編集長が、関西のスタートアップ企業の代表を迎えて、新たなビジネスを学ぶラジオ番組「林ゆめの教えて!エコノミスト」が3月19日、放送された。番組では、他者企業の最終面接まで進んだ学生と企業のマッチングサービスを提供する「株式会社ABABA」の代表取締役・久保駿貴(くぼ・しゅんき)さんと、ヴィーガンに特化したレシピ投稿サービスを提供する「株式会社ブイクック」CEOの工藤柊(くどう・しゅう)さんが、それぞれのビジネスを語った。

林 この番組は、日本に元気を与える関西のスタートアップ企業の代表をお呼びし、新たなビジネスを学ぶ番組です。そして一緒に話を聞いて解説していただけるのは、創刊99年を迎えるワンランク上の硬派な経済情報を発信する経済誌「週刊エコノミスト」の編集長、秋本裕子さんです。よろしくお願いします。

秋本 よろしくお願いします。

林 私は現在もIT企業に勤めていたりもするので、企業の代表にお話を聞くのはめちゃくちゃ楽しみで、ビジネスをもっと詳しくなりたいんですけれども、私自身はビジネスに詳しい訳でもないので、秋本さんの『ビジネスのプロ目線』で一緒に楽しくお話を聞ければと思います。

秋本 今日紹介するスタートアップ企業は、まだ誰も手掛けていない市場とか、気づいていない分野に目をつけて事業を立ち上げ成長しているような企業のことを指します。私も普段から、会社の経営者の方々にお話を聞く機会が多いのですが、基本的に東京に本社がある企業が多く、しかも上場企業が中心です。もちろんその取材は楽しくて、ビジネスをする上で欠かせない情報にもなりますが、上場企業は会社の規模が大きく、株主や従業員、取引先などの関係者が非常に多いので、いろいろなところに気を使わなければならない。機動的に新しいビジネスを始めるとか、誰もやっていない分野に挑戦するとか、そういったことが非常に難しいという面もあります。

それに対してスタートアアップというのは何にも縛られずに、新しい分野に果敢に挑戦できる。しかも社会課題の解決に繋がるようなビジネスを始められる。そういうところがいい点だと思います。

「株式会社ABABA」の代表取締役・久保駿貴さん 最終面接に進んだ学生と企業をマッチング

林ゆめさん(左)と「株式会社ABABA」の代表取締役・久保駿貴さん
林ゆめさん(左)と「株式会社ABABA」の代表取締役・久保駿貴さん

林 1社目は、他者企業の最終面接まで進んだ学生と企業のマッチングサービスを提供する「株式会社ABABA」の代表取締役・久保駿貴さんです。久保さんはおいくつですか?

久保 24歳になります。

林 本当にお若いですね。では「ABABA」のご説明をお願いします。

久保 「ABABA」は自社で惜しくも採用できなかった学生を、企業間で推薦し、同時に採用もできるプラットフォームです。

林 企業のホームページを見ながら気になることを伺っていきたいと思います。事業の魅力がいくつかありますが、詳しく教えてください。

■面接に来た学生の関係をつなげる

久保 一つは他社の最終面接まで進んだ優秀な学生を採用できたり、就職活動後半の時期で、内定辞退者が出てしまった時、効率的に学生を採用できることです。二つ目は、不採用でも、企業と学生の関係を良好で継続的なものに保ち、 不採用通知を送る人事担当者の心理的負担が軽減できることです。他には、一人の先輩社会人として、学生の就職活動を推薦によって応援できることが魅力だと思います。

林 学生なら誰もが悩むのが就活だと思うので、こちらのサービスは学生にとってもありがたいサービスだと思います。

秋本 私も3年間、毎日新聞の記者の採用面接を担当しましたが、新卒採用の面接の時には同業他社の採用試験を受けたかとか、どこまで進んでいるかを必ず確認しています。同業他社の内定が出ているとか、最終面接まで進んだのであれば、いい人材に違いない、優秀だから取られる前に採用すべきだという意識が働きます。面接に来た人は、記者になりたいという強い気持ちややる気があって、優秀な人が多い。いい記者になるだろうなと思っても、採用人数が限られているので、どうしても採用できない人が出てきてしまい、残念に思うことがありました。内定を出した人も、そうでない人も紙一重の差の時もあります。採用できなかった人も、同業他社で活躍できるのであれば、本人にとってはもちろん、業界全体の発展を支えるということにつながる。回り回って内定を出さなかった企業にも恩恵があると考えられるので、非常に意義がある。何より忘れてはいけないのは、面接に来てくれた学生も大事なお客様なので、今後もファンでいてもらわないといけない。(ABABAは)それがかなうビジネスだと思います。企業も学生もあったらいいなと思うところに目を向けたビジネスで、今後も需要があるでしょうね。

■友人の就活失敗が起業のきっかけに

林 会社を立ち上げたストーリーを教えてください。

久保 秋本さんもファンという言葉を使われたのですが、私の友人の就職活動の経験が元になっています。彼は大手広告会社を目指していて、その会社に一生を捧げるぐらいの気持ちでがんばっていたのですが、残念ながら最終面接で落ちてしまった。それ以降、昨日までファンだったのに、その企業を悪く言うようになり、ファンを一人失ってしまったなと思った。無機質でテンプレートの不採用通知一通という形でおしまいというのは、本当に味気ないと思い、そこでいい関係を続けられないかと思いました。そして、彼がうつになってしまったということもあり、最終面接までがんばってきたことはどこかで評価されてもいいのではないかということがきっかけになりました。

林 就職で悩んでいる学生にとっても、採用する企業にとってもWinWinのサービスになっていますね。このサービスで、こだわったポイントはどこですか?

「ABABA」について話す久保さん
「ABABA」について話す久保さん

■学生に寄り添った目線を目指す

久保 カスタマーサクセスです。特に学生と接するところは気を配っています。落ちてしまって登録されることが大半ですので、精神的にダメージがあって、落ち込んでいたりとか、ご両親やご友人に相談しにくいこともあると思います。弊社の公式LINEに多くの相談が寄せられるのですが、 一つ一つ丁寧に対応するのは時間がかかりますが、丁寧に対応することで、学生さんが他の学生さんに紹介してくれたりすることが生まれると思いますし、学生さんにに寄り添った目線というのが目指すところになります。

林 就活でストレスを抱えている学生も多いので、ありがたいサービスだと思います。この事業ではどんな社会貢献ができると思いますか?

久保 最終面接までの時間が評価されていないと思います。平均で12時間ぐらい使われているのですが、こうした時間が評価されないことで、就活うつになってしまったり、就活が原因で命を絶ってしまったり、これは日本の社会課題だと思います。サステナブルとか、ウェルビーイングとか、落ちてしまっても前を向けるということを学生さんに伝えたいですね。

秋本 これは大きな社会課題だと思いますね。

■起業は地道にコツコツと

林 最後に関西の若手起業家に向けてメッセージを。

秋本 僕自身もサービスを立ち上げてきたのですが、サービスを作りたいという気持ちを持ち続けてほしいと思います。会社に入るとやる気がなくなってしまったりとか、起業の厳しさを目の当たりにしたりということもあるかと思いますが、起業した当時の気持ち、僕だったら友人の経験を忘れないようにしてほしいと思います。 起業というのは本当に地味なことです。 いかに地道にコツコツできるかだと思います。「細かいところまできちんとできる組織を創る」ことが成功の近道だと思います。関西にもそういった起業のエコシステムもあるので、盛り上げていきたいと思います。

林 いかがでしたか秋本さん。

秋本 若くて、24歳で社会課題に立ち向かおうと起業するというのはバイタリティーがあるなと感心しました。

林 私自身今の会社に中途採用で入ったので、ちゃんと就活を経験したことがなくて、周りには就活に悩んでいた人も多かったので、このサービスがあったら勧めていきたいなとおもいました。

「株式会社ブイクック」CEO・工藤柊さん ヴィーガン料理4000以上のレシピを提供

林ゆめさん(左)「株式会社ブイクック」CEOの工藤柊さん
林ゆめさん(左)「株式会社ブイクック」CEOの工藤柊さん

林 続いては、ヴィーガンに特化したレシピ投稿サービスを提供する「株式会社ブイクック」CEOの工藤柊さんです。工藤さんもお若いですよね。

工藤 先月23歳になりました。

林 大学を卒業したばかりですね。では、ブイクックのご説明をお願いします。

工藤 ブイクックは、ヴィーガン生活を支えるスタートアップで、主に二つの事業を運営しています。ヴィーガンレシピの投稿サイト「ブイクック」と、ヴィーガン商品が買える通販サイト「ブイクックモール」です。

林 通販で購入できたりもするんですね。

工藤 作れるし、買えるという状態を作っています。

林 ホームページを拝見すると、4000以上のヴィーガンレシピが載っているということで、ジャンルごとに分かれていて、とても見やすくて、スイーツなどもあるし、こんなにレシピがあったら飽きないですよね。こちらのサービスの魅力を一言で言うと何ですか?

工藤 一言で言うと、レシピの数ですね。ヴィーガンというと何を作れるか分からない。僕も5年前からやっていて、分からなかった時期がありました。ブイクックには、毎日たくさんの人がレシピを投稿していて、現在レシピが約4400になりました。「これも作れるんだ、あれも作れるんだ。だったらできそう。楽しく続けられそう」となるポイントが魅力だと思います。

林 こんなにヴィーガンのレシピがあるんだ、と驚きました。では、会社を立ち上げたストーリーを教えて下さい。

■高校3年からヴィーガン生活

工藤 5年前、高校3年生の時から、動物倫理と環境問題を理由にヴィーガン生活を始めました。それまでは唐揚げやラーメンを食べていたので、そこからヴィーガンというお肉や魚、牛乳、卵も食べない生活を始めて、「もうおにぎりしか食べられないのでは」と思い、2週間ぐらいはおにぎりばかり食べていました。そこで「ヴィーガンフェス」というヴィーガンの食フェスのようなものがあり、そこでは、卵を使っていないけど卵サンドみたいなものや、肉を使っていないけど、大豆を使ったハンバーガーが売られていて、「それがあったらもっと楽に続けられたのに」と思いました。「何が作れるか分からないから続けられない」ということがハードルになっている人に、「こんなものを作れるのだったら続けられる」というふうに考えを変えてもらえるように、レシピを知っている人や料理の得意な人が、始めたての人や料理が苦手な人に共有できるプラットフォームとして始まりました。

林 私もレシピを見たときに、オムライスが好きなので、卵が使えないのに、検索すると何個か出てきて、「すごい、オムライスですらも作れる」と驚いた。

秋本 見た目がオムライスというのも大事なんですね。

工藤 そうなんです。オムライスが食べたいけど、食べられなくなっちゃうとハードルが高くなりますが、湯葉とか豆乳とかを使って作ると実は食べられますというものになります。そういうものが他にもたくさんあります。

林 この事業で、こだわったポイントは何ですか?

「ブイクック」について話す工藤さん(右)
「ブイクック」について話す工藤さん(右)

■全国を回ってユーザーニーズを聞き取り

工藤 いまレシピのサイトや通販のサイトを始めているのですが、僕たちはヴィーガンを始めたいとか、続けたいという人が、もっと楽に、楽しく続けられるようにしたいので、起点はユーザーにしています。ブイクックを作るときも、北海道から沖縄まで回って、全国のヴィーガンやベジタリアン330人ぐらいと直接会って、お話しして、「そういうところが困っているんですね」とか、「普段このシーンで大変」ということを聞いて、そうしたものをちゃんと解決できるサービスを作ることを心がけました。とにかく当事者とかユーザーになりうる人の話を聞くということにこだわってきました。

林 そんなに多くの方にお話を聞いたのですね、すごい時間をかけて、努力をしているんですね。サービスを通して伝えたいことは何ですか。

■ヴィーガン生活を身近に感じてほしい

工藤 ヴィーガン生活はハードルが高いと感じる方や、始めていても大変という方が多いので、もう少し気楽に感じてもらいたい。ペペロンチーノをよく作りますが、ペペロンチーノもヴィーガン料理なので、あまり気負わず、納豆をかけてご飯を食べるとか、パスタを作ってみるところからでも、ヴィーガン生活ができるという、身近さを伝えていきたいと思います。

林 ヴィーガンと聞くと食事の制限などがあって大変だと思ったのですが、このホームページを見ていると、レシピ通りにすればいろいろな料理ができて、楽しく続けられるのだな、と思いました。こちらの中で人気のレシピは何ですか?

工藤 ヴィーガンのもので、「作れなさそう」というものが人気です。例えば、乳製品を使っていないチーズケーキのようなものや、大豆ミートを使った唐揚げなどです。僕は薄揚げにしょうゆやニンニク、みりんなどをしみこませて片栗粉をまぶして揚げるという「薄揚げの唐揚げ」をよく作るのですが、それもおススメです。

林 味は唐揚げなのですか?

工藤 食感は薄揚げなんですが、味はニンニクやしょうゆとかで味付けしているので唐揚げに近いものができます。おいしいものがいっぱい載っているので、作ってみてほしいですね。

■目の前の人に役立つものを届けるのが起業の第一歩

林 ホームページを見れば何でも載っているので、私も作ってみたいと思いました。最後に関西の若手起業家に向けてメッセージをお願いします。

工藤 最初に環境問題や動物倫理といった社会課題から起業しようと思ったので、その文脈でしか話せないんですが、自分の感じている社会の条理な部分や、周りに苦しんでいる人がいたりする事も多いと思うので、自分の手の届く範囲の人を助けるとか、目の前の人に何か役立つものを届けるというのが、起業の一歩目だと思います。東京だろうが、関西だろうが、地域は関係ないと思うので、まずは関西からできる範囲でやってみるというのをがんばってほしいと思います。

まとめ 社会課題に取り組むスタートアップに注目

林 お二人に話を聞いてきましたが、秋本さんはいかがでしたか。

秋本 二人ともこれまでにない革新的なビジネスを手掛けられていて、今後非常に大きく成長するような企業に育つと期待が持てました。

林 二人ともまだ大学卒業したてで、本当にお若いですよね。

秋本 そういった若い人ががんばっているというところが元気づけられますね。アメリカに比べるとスタートアップが少ないと言われてますが、日本でも若手ががんばっているという事例として興味深く聞くことができました。

林 ちなみに私が起業するとしたらどんなビジネスが向いてそうですか?

秋本 そうですね、スタートアップということでいうと、今すぐには難しいですが、広い概念で起業というのであれば、記者になりたての時に上司に、「書く記事に困ったら、動物、子供、食べ物の話を書け」と言われました。この三つの分野は読者の関心が高い。つまり、お金を払っても、その情報を得たいというニーズがあるということで、これはビジネスにつながっていて、この三つの分野だと、動物ならペットの商品やサービス、子供なら教育関係とかいいのではないでしょうか。

林 最近の起業のはやりとか、こういうものが伸びているとかものは

秋本 今日会った2社のように、社会課題に取り組むスタートアップが最近の本当のはやりですね。SDGsと言われますが、社会課題をどう解決していくかは、企業も一人一人の個人も考えていかなければならない。日本はスタートアップが増えているとはいえ、アメリカに比べるとまだまだ少ない。その理由の一つが資金を集めにくいことです。スタートアップがどこから資金を集めるかというと、ベンチャーキャピタルと呼ばれる投資目的の企業や、エンジェル投資家といわれるスタートアップを応援したいというお金持ちの個人ですが、それがアメリカに比べると圧倒的に少ない。投資をしてもらうために事業をプレゼンテーションする「ピッチ」と呼ばれる場も少ない。あったとしても東京が圧倒的に多くて、関西やその他の地域は少ないという現状があります。あと、失敗してもやり直せるという意識が高まれば、もっとスタートアップが増えてくるのではないかと期待しています。

林 ありがとうございました。ABABAとブイクックの詳しい情報は会社のホームページをご覧ください。MBSラジオの番組YouTubeでもこの番組を配信しています。林ゆめYouTubeチャンネルでも番組の裏側を配信していますので、併せてお楽しみください。


株式会社ABABA
https://abababa.jp/

株式会社ブイクック
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