公平で効率的な物流の未来へ

KEYCREW CEO  中村慶彦 2024.02.05

 独自のシステムとAI技術の活用で、よりフェアな物流業界の構築をめざす

(聞き手=北條一浩・編集部)

 社名は発音のとおり、「気が狂う」から来ています。従来の物流業界にはなかった理想の仕組みを作るために、狂ったようにアイデアを考え、変えていこうという意味です。現在、EC事業者向けのプラットフォームを提供する「STOCKCREW」、物流事業者や荷主にAMR(自律走行搬送ロボット)を提供する「ROBOCREW」などの事業を手がけています。

 物流業界は、出荷するモノが多ければ多いほど単価が安くなるようにできています。これは当然の構造で、弊社としてもそれが悪いと言うつもりはありません。ただ、この構造だと大規模事業者ほど有利になり、扱いの小さい中小事業者は高い流通コストに甘んじなければなりません。

 ところが最近では個人でもEC(電子商取引)事業に参入しやすくなり、小ロットの物流が増えました。ここにビジネスチャンスがあると考えた事業がSTOCKCREWです。どんなお客さんにもフェアになるように、1日たった1件しか出荷しない事業者も数万件を扱う事業者も、すべて同じ1種類だけの料金体系で、同じオペレーションフローで動かしていく。そして1種類しかない代わりに常にデータ解析と検証をアップデートしていますから、この4年で4回、料金改定しています。

 こうして凹凸をならし、どのEC事業者にも公平な仕組みを作っているわけです。

内製化にこだわる理由

すぐ集荷する商材が1段目、上段は保管用

 私はKEYCREWを始める前は、大手物流企業に勤務していました。そこで業界のさまざまな人々と出会い、多くを学びました。しかし、EC市場が規模の小さい多様な個性でにぎわいを見せてきた現状に対し、大手だとなかなかきめ細かい対応が難しいこともわかってきました。そこで自分でやってみようと考えたんです。

 STOCKCREWが可能になった背景には、徹底した内製化があります。倉庫管理から管理システムなど、自社で開発することで改善スピードを上げてきました。

 この内製化が功を奏して成長できたわけですが、すべてやろうとしたために業務過多になり、明らかにアセットヘビー(多額の投資)に苦しんだことも事実です。何度も「もうやめよう」と思ったし、もう一度同じ事をやれと言われたら絶対に断ります(笑)。

 いま千葉県八千代市と埼玉県八潮市に倉庫があり、そこで自律走行型の搬送ロボットが荷物のピックアップに活躍しています。

 八千代市の倉庫でいえば、現在およそ500社と契約し、1万平方メートルの広さを約60台のロボットが縦横に動き回っています。倉庫には入荷から格納、梱包(こんぽう)、出荷とさまざまな業務がありますが、入荷から格納にいたるピッキング作業をもし人間だけでやるとしたら、今の3~4倍のスタッフが必要で、つまりはそれほど効率化されていることになりますし、今年中にはAMR100台導入を見込んでいます。

「世界を面白いモノで埋め尽くす」をモットーに、クリエーティビティーあふれるユニークな小事業者の支援をさらに加速していきます。

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企業概要

事業内容:ネットショップ事業者の発送代行サービスおよび物流倉庫で稼働できる自律走行型ロボットの販売

本社所在地:東京都中央区

設立:2018年8月

資本金:0円

従業員数:22人

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 ■人物略歴

なかむら・よしひこ

 1986年愛知県生まれ。慶応義塾大学法学部卒業後、三菱商事ロジスティクスに入社し、営業や物流センターなどを担当する。2018年にKEYCREWを創業し、現在は同社CEOのほか、関連会社のSTOCKCREW、ROBOCREWでもCEOを務めている。

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週刊エコノミスト2024年2月13日号掲載

中村慶彦 KEYCREW CEO 公平で効率的な物流の未来へ