スマホ自体が目の診察器具

OUI代表取締役 清水映輔 2024.03.04

 目の疾患は途上国のみならず先進国も意外と多い。多くの人が持っているスマートフォンをそのまま眼科の医療機器に変身させた。

(聞き手=和田肇・編集部)

 目の診療のためにスマートフォンに装着する機器(アタッチメント)「Smart Eye Camera」(写真・下)の販売・レンタルと、この装置で撮影した目のデータを専用のアプリで眼科専門医が遠隔診断するサービス「+EYE DR.」(プラスアイドクター)を展開しています。眼科医が使う細隙灯(さいげきとう)顕微鏡は、スリット状の光を目に当てて、眼瞼(がんけん)や角結膜、前房、虹彩、水晶体、硝子体などを診察するものです。ただ光を当てて見ているのではありません。Smart Eye Cameraは、スマホのライトの光を目の診察用の光に変換する器具です。小型で携帯性に優れ、スマホと合わせてポケットの中に入れておけるので、いつでもどこでも目の診察が可能です。専用アプリ+EYE DR.は、撮影した目の撮影データをクラウドを介して、眼科医が遠隔診療を行うサービスです。

 Smart Eye Cameraは、医療機器として国の許可を取得しており、これまで国内で約100件、海外では62カ国で利用されています。海外でもその国の医療機器としての許可を取得する必要があるので、導入までに時間がかかりました。利用はやはり眼科の医師・医療関係者が多い。途上国は目の疾患の治療のため、日本では予防が中心の診察が多い感じですね。途上国は医師の数も病院も不足している場合が多いので、スマホに装着するだけで簡単に診察でき、かつ遠隔診療できるという点は大きいです。日本では社員の健康診断などに活用すると便利だと思います。遠隔診療でデータのやり取りをしますから。そうしたサービスもしています。

目の診断で他の病気が分かる

 眼科の医師になってしばらくしてから、まずは会社を作りました。それから今の製品開発を始め、最初は自分で3Dプリンターを使うなどして製品を作りました。アプリの制作は専門の会社にお願いしました。スマホ自体を目の診察のための器具にするという発想を実現できたのは、やはり、自分が眼科医だからだと思います。医師になろうと決めていたのですが、医学界は“縦割り社会”ともいわれます。その中でいろいろとできたのは、慶応義塾大学という環境が良かったのかなと思います。

 今後は人工知能(AI)を活用した目の画像診断や、目の血管を診断することで他の病気の可能性が分かる技術の開発などに取り組んでいきたいと思います。今こうした研究が進んでいます。目を診察すれば、目の病気だけでなく、他の病気も分かるようになればと思っています。

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企業概要

事業内容:医療サポート、医療機器開発事業など

本社所在地:東京都港区

設立:2016年7月

資本金:195万円

従業員数:15人

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 ■人物略歴

しみず・えいすけ

 1987年生まれ。神奈川県出身。2013年慶応義塾大学医学部卒業。眼科専門医の道に進む。16年OUI設立。19年にスマートフォンに簡単な器具を装着するだけで目の検査ができる「Smart Eye Camera」を自ら開発。現在も大学で講師を務める。医学博士。36歳。

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週刊エコノミスト2024年3月12日号掲載

清水映輔 OUI代表取締役 スマホ自体が目の診察器具