香り高い抹茶を世界に広める
World Matcha代表取締役 塚田英次郎 2024.06.03海外で人気の抹茶。誰でも簡単にひきたての抹茶を作れるマシンと品質の良いオーガニック(有機)の茶葉で、抹茶の飲用を広げている。(聞き手=永野原梨香・ライター)
自宅で抹茶を作り飲むことのできるマシン「CUZEN(くうぜん) MATCHA(まっちゃ)」(備品付きで税込み・3万9600円)と、専用の碾茶(てんちゃ)(抹茶の原料である茶葉。税込み・1袋1700円から、定期購入は15%OFF)の開発・販売をしています。茶葉1袋(20グラム)で約20杯分の抹茶を作ることができます。
米国では2020年10月、日本では21年7月に発売し、累計販売台数は8000台、茶葉の売り上げは現状、単月で6万ドル(約940万円)。22カ国に出荷しており、売り上げは米国が圧倒的に大きいです。ひきたての粉で作られた抹茶は鮮やかな緑色で香りも良い。ですが、自分で作るのは難しいので、ここまでの作業をしてくれるマシンを作りました。
まず、マシン中央下の台座に、60ミリリットルの水を入れた専用のカップを置きます。中央上の筒部分に茶葉を入れ、ボタンを押すと茶葉がひかれ抹茶(粉)となってカップに落ちます。同時に、カップの磁石入りの部品と台座内蔵の磁石が作用してカップが回り、落ちてくる粉と水が攪拌(かくはん)され、抹茶の液体ができます。そのまま飲んでもいいですし、牛乳を入れて抹茶ラテに、ソーダを入れれば抹茶ソーダになります。
抹茶の飲み方として米国で一般的な抹茶ラテまでマシン一つでできたら、とも思いましたが、搭載機能が多いと開発時間もコストもかかる。日常的に抹茶を飲んでもらうためには、使いやすくなければいけない。抹茶の液体を作った後の工程は、人の手に任せることにしました。コーヒーメーカーなどで一般的に搭載されているウォータータンクやチューブもなく、手入れも簡単です。前職のサントリーで伊右衛門などの茶飲料の商品開発に携わっているなかで、米国で抹茶を好む人が多いのにもかかわらず、本格的な抹茶を日常的に飲める場が少ないことを目の当たりにし、米国で19年、起業に踏み切りました。
今後は業務用を販売
20年1月、世界最大の家電展示会「CES 2020」でイノベーション賞を獲得することができ、メディアにも注目された直後、コロナ禍に突入。人と会わずに売るには、米国最大のクラウドファンディング「Kickstarter(キックスターター)」しかないと実施し、CESとキックスターターとで400台ほどを事前受注でき、10月に発売。事前受注してくれた方々がSNSで好反応をシェアしてくれたことで徐々に売れ出しました。米『TIME』誌が選出する「Best Inventions of 2020」に選ばれたことや、米有名女優グウィネス・パルトローのEコマースに卸したことも、大きな要因でした。
親会社であるWorld Matcha Inc.は1月、業務用マシン量産のため、約7億円の資金調達を完了しました。ある米テック企業では1日に100杯以上の抹茶ラテの注文があるものの、注文ごとに作るのが大変なため作り置きをし、ロスが出ているそうです。このマシンがあれば、ロスの心配もありません。
日本では、訪日外国人が多い飲食店やホテルの需要を見込んでいますが、もちろん、その他のお店でも使用していただきたいです。
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企業概要
事業内容:抹茶関連商品の開発・販売
本社所在地:東京都目黒区
設立:2019年2月
資本金:200万円
従業員数:約20人
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■人物略歴
つかだ・えいじろう
1975年埼玉県生まれ。98年東京大学経済学部卒業、サントリー入社。「DAKARA」「伊右衛門 特茶」などヒット商品を手掛ける。在職中に米国スタンフォード大学院へ留学。2018年社内ベンチャーで米国での抹茶カフェ事業を立ち上げる。19年退職し、米国でWorld Matcha Inc.、日本法人のWorld Matchaを設立。
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週刊エコノミスト2024年6月11・18日合併号掲載
塚田英次郎 World Matcha代表取締役 香り高い抹茶を世界に広める