経理業務の法対応をAIで解決

Deepwork代表取締役CEO 横井朗 2023.02.06

 消費税のインボイス制度や、改正電子帳簿保存法の対応を格安で自動化し、人手不足に困る中小企業や個人事業主の効率化を手助けしている。

(聞き手=金山隆一・編集部)

 2022年1月に改正電子帳簿保存法がスタートし、請求書や領収書などはデジタル化し、保存することが24年度から義務付けられます。さらに、23年10月から始まる消費税のインボイス(適格請求書)制度では、請求書に登録事業者番号を記載し、国税庁のデータと照らし合わせる作業が必要になります。中小企業や個人事業主にとって、これら経理業務の法改正への対応は死活問題です。これをデジタルの力で自動化し、導入可能な料金で経営の効率化を進める手助けをしています。

 主な仕事は三つ。一つは、請求書の受け取りから入力、支払い、計上までの業務の自動化。二つ目は請求書の発行から売り上げの計上、入金確認の自動化。三つ目が改正電帳法への対応で、紙に印刷された帳簿をデジタルデータにして保存する保管サービスを請け負います。

 紙で届いた請求書はお客様にスキャンしてもらうか、我々のスキャンサービスも利用可能で、メールに添付されたPDFファイルの請求書なら自動で取り込むことができます。他社との違いは料金です。月額基本料金は980円からで、人工知能(AI)が読み取る場合は請求書1件当たり50円、人間の目で確認する場合は1件当たり100円でデータ化します。

 なぜ安くできるのか、その理由はマーケティング費用を節約し、商談はすべてオンラインで行うなど効率化しているからです。テレビCMなども一切行っていません。

目標はIPOではない

 20年3月にサービスを開始した時は数件の受注でしたが、3カ月後には200社、21年9月には1000社を超え、22年末には5000社が視野に入りました。飛躍的に増えたのは、インボイス制度や改正電帳法への対応が企業の大きな課題となり、経費精算の自動化やクラウドサービスの認知度が高まったからです。

 我々の強みはリモートワークで雇用を全国に広げることができる点です。経理業務は入力を1人でやると不正やミスの温床になる。だから人間によるダブルチェックが必要です。これを当社はAIで行うため人材資源の省力化につながる。さらにAIの入力を人間が確認する作業も怠らず、それをAIの性能の高度化にフィードバックします。契約の継続率が99.5%と高いのも強みです。

 スタートアップ企業を揶揄(やゆ)する言葉にIPO(株式公開)ゴール、つまり「上場でキャッシュを得たら終わり」という考え方があります。私はベンチャー企業の経営に参画し、IPOも事業の売却も経験しましたが、上場や事業売却そのものを目標にすると、設定した数字が目標になってしまう。そうではなく、私が目指すのは人生の価値の最大化です。「時間の密度を高め、価値ある時間を増やす」を社是に掲げるのはそのため。効率化した分は家族との時間やより付加価値の高い仕事に使ってほしいのです。

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企業概要

事業内容:面倒な請求書のアナログ業務を全て自動化するサービスの提供

本社所在地:東京都新宿区

設立:2019年2月

資本金:1億円

従業員数:40人

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 ■人物略歴

よこい・あきら

 1977年3月東京都生まれ。2000年に基幹業務システムのエンジニアとしてキャリアをスタート。03年にビーブレイクシステムズに参加し、基幹業務システム開発を担当。15年に記帳業務自動化のクラビスに参加し、16年に最高技術責任者(CTO)に就任。19年にDeepworkを設立し、代表取締役最高経営責任者(CEO)。45歳。

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週刊エコノミスト2023年2月14日号掲載

横井朗 Deepwork代表取締役CEO 経理業務の法対応をAIで解決