出会いのカギは「奨学金」!
アクティブアンドカンパニー社長 大野順也 2025.07.14
借金返済という重い課題を、学生×企業のマッチングでプラスに転じる。(聞き手=北條一浩・編集部)
企業経営を活性化させるため、組織人事のコンサルティングを業務として行っています。創立して来年で20周年になりますが、2024年にスタートし、最も力を入れている「奨学金バンク」についてお話しします。
いま、大学生の2人に1人が奨学金を利用しています。返済義務のない給付型も増えていますが、日本学生支援機構の貸与型の場合、借入総額は平均344万9000円(2024年、労働者福祉中央協議会調べ)。返すのに30代半ばまで、15年くらいかかるのが現状です。少なくない新社会人は就職しても経済的にマイナスからスタートしなければならないわけで、これでは元気に活躍できません。
これはもはや個人ではなく社会構造の問題だと思いました。そこで長年人事に携わってきた経験から、この奨学金問題に正面から取り組み、元気な若手を増やしていきたいと考えました。
「奨学金バンク」は日本学生支援機構から承認を受けています。私の知る限り、奨学生と企業、代理返済を営む当社という三角形のプラットフォームを日本で初めて実現した仕組みです。当社に登録している企業を紹介して正社員求人に応募してもらい、実際に入社した場合、3年間にわたり月々1万円、つまり36万円を代理返済という形で支援します。学生と学生がキャリア形成を希望する企業のマッチングを行い、その企業が支払う人材紹介手数料の中から当社が代理返済します。
現在はここまでですが、将来は全額返済支援まで可能にしたいと考えています。登録企業以外にも、奨学生の支援を通じて若者が積極的に挑戦できる社会の実現を望む方々からの寄付を募っています。寄付は全額、会社の財産とは分離して管理される三井住友信託銀行の財産隔離口座に入れており、すべて奨学金返済のみに利用しています。
目標は社会インフラ
私は大学を卒業する頃、自分が何をやりたいのかがうまくつかめず、数だけはたくさん、多業種にわたり40社ほど訪問しました。その中で、「どんな企業だって人が運営しているわけで、働いている人のあり方にアプローチする仕事には無限のマーケットがあるのではないか」という思いから、人材業に関心を持つようになりました。幸い、採用された会社も人材関連で、そこで派遣やアウトソーシングについて学びました。同じく人事関連で組織・人事戦略コンサルティングを経験できる会社に転職したあと、2006年に32歳で今の会社を立ち上げました。
私が「奨学金バンク」の目標にしたいと考えているのは、社会インフラとして定着させることです。奨学金を借りるのと「奨学金バンク」への登録を同時に、セットでするのが当然という流れを作りたい。そうすれば、借りることが怖くなくなり、それどころか、お金がなくても奨学金を借りて良い大学に進むべきだという世の中になってほしいと思います。
借金返済におびえず、しっかりと勉学に集中してきた若者がどんどん企業に入っていくことで、必ずや日本経済復活の道が開けてくると信じています。
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企業概要
事業内容:組織・人事コンサルティング事業及び奨学金返済支援事業
本社所在地:東京都千代田区
設立:2006年1月
資本金:9998万円
従業員数:117人
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■人物略歴
おおの・じゅんや
1974年兵庫県生まれ。大阪産業大学経済学部卒業後、パソナ(現パソナグループ)に入社。主に営業部門で働き、関連会社の立ち上げなども手掛けた。その後、トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツ)を経て、2006年、アクティブアンドカンパニーを設立。
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週刊エコノミスト2025年7月22・29日合併号掲載
大野順也 アクティブアンドカンパニー社長 出会いのカギは「奨学金」!