気候変動による経済損失を計算
Gaia Vision代表取締役?/Gaia Vision共同創業者 北祐樹/出本哲 2023.03.27気候変動による経済損失を計算
近年、「過去に経験のない」豪雨や豪雪が増えている。企業は気候変動でどう影響を受けるのか。それを明らかにする。
(聞き手=和田肇・編集部)
北 東京大学生産技術研究所で開発された気候変動影響シミュレーションを基に、企業向けの自然災害リスク分析サービスを行っています。得意なのは洪水に関するリスク分析で、具体的にどのような洪水の影響が起きて、その企業にとって経済損失はどのくらいになるかを、当社独自のアルゴリズムを用いてシミュレーション、計算します。
計算可能な地域は日本を含めて、陸地のあるところならば、世界中どこでも可能です。元宇宙飛行士の毛利衛さんが2000年に衛星で作成した世界の標高データが大きな基礎になっています。国土交通省や気象庁も洪水関連のデータを提供していますが、当社は「何メートル水没」だけでなく、その企業のさまざまな経済的損失を計算できます。利用料金は数万円から数百万円程度と内容によって幅があります。
出本 企業などユーザーが利用料金を支払い、当社のウェブアプリケーションを使って自ら影響を計算していただく。それと、コンサルティングの形で当社で分析を行う2通りがあります。現在までに9社が利用しています。うち4社はウェブアプリを使い自分で計算する方法、残り5社はコンサルティング形態です。やはり製造業関係の企業が多いですね。23年度からは有価証券報告書で、気候変動による自社のリスクを情報開示することが義務化されるので、そうした面からのニーズもあります。
企業だから災害防止につながる
北 子どもの頃から自然災害や環境問題に興味があり、大学・大学院では台風などの研究をしていました。研究者になりたいと思っていたのですが、博士課程の3年目ぐらいの時に、研究だけでは自然災害を防げないが、企業活動にすれば防ぐことにつながるのではないかと思い、損害保険会社に勤めた後、この会社を立ち上げました。
出本 私は小学生の頃から予測に関心があって、中学生の時に当時、史上最年少で気象予報士の試験に合格しました。大学では東京大学大気海洋研究所で温暖化による気温上昇などの研究をし、その後コンサルティング会社でAI(人工知能)関連の仕事を経て、北氏の取り組みに合流しました。
やはり日本ではアカデミックな知見を持ちつつ、ビジネスもしっかりやる企業が必要です。よく「過去に経験のない豪雨、洪水」などといわれますが、よく見ると予見できたケースがあります。当社のような会社がそれを計算・リスク分析して予見性を高める。ここは非常に大事な部分だと思います。
北 ちょうど、自分たちのソフトウエアの大幅なバージョンアップを終えたところです。企業にとって気候変動の影響予測、財務への影響分析など、より使いやすいものになったと思います。今後はユーザーを増やしていきたいですね。また、リアルタイムでの洪水予測や水資源関係の影響予測技術の開発、海外展開などにも力を入れていきたいです。
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企業概要
事業内容:気候変動による自然災害リスクや経済損失データの提供、コンサルティング
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2021年9月
資本金:100万円
従業員数:2人
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■人物略歴
きた・ゆうき
1992年和歌山県生まれ。東京大学、同大学院で爆弾低気圧などの研究を行う。2020年博士号(環境学)取得。20年から21年まで損害保険会社で自然災害のリスク分析などに従事。21年9月に出本哲氏とGaia Visionを設立。東京大学生産技術研究所特任研究員も兼務。30歳。
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■人物略歴
でもと・さとる
1989年神奈川県生まれ。中学生の時に当時史上最年少で気象予報士試験に合格。東京大学、同大学大気海洋研究所で気候変動に関する研究を行う。コンサルティング会社でAI関連事業などに従事した後、2021年9月に北祐樹氏とGaia Visionを設立。34歳。
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週刊エコノミスト2023年4月4日号掲載
北祐樹 Gaia Vision代表取締役/出本哲 Gaia Vision共同創業者