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阪和ホールディングス株式会社 代表取締役社長

田村忠之

https://www.hanwa-hd.co.jp/
Tadayuki Tamura

1986年和歌山県生まれ、PL学園高校卒業後、米国留学を経て父が経営する阪和総合防災に入社。2020年に社長就任。同年、阪和ホールディングスを設立し、阪和総合防災、第一電機設備工業、紀和商店、瀬戸内工業所、エンスイ工業を子会社化。事業を通じて、地方創生を目指す。

M&Aで急成長「正しく生きる」をモットーに人望を集める若き経営者

防災・電気・土木工事や建築資材をはじめ、管工業や船舶部品の加工製造まで取り扱う、阪和ホールディングス株式会社の田村忠之社長は、M&Aによって事業規模を急拡大し、和歌山だけでなく、地方からの人材採用にも積極的に取り組む。若くして会社のトップになったにも関わらず、今では、M&Aで譲り受けた会社の社長が「田村社長の一番のファン」と公言するほどだ。「人として正しく生きる」をモットーに、固定概念にとらわれず、挑戦し続ける田村社長に展望を聞いた。

父が会社を経営していた事から二代目として見られてきた田村社長は、当時を振り返って「後継は決して楽ではないんです」という。学生時代は米国に野球留学したが、けがが原因でプロの夢は途絶え、父の会社に入社した。自社の経営状況を理解した時には大きな危機感を覚えたという。まずは会社を立て直す事が第一優先だったため、社員の頃から経営者としての自覚を持ち、社内外の先輩たちからも日々アドバイスをもらって、ビジネスを一から学んだ。しばらくは旧態依然の経営方針を改善し奮闘する日々を送ったが、今と昔では外部環境が違う中、「後継はいいよな」といわれ、強烈な違和感を持ったという。

社長に就任してからは「家業」ではなく、クリーンな「経営」を目指した。学生時代の野球で鍛えたタフネスと勝負勘、広い視野が経営判断の役に立った。経営理念は「正しく生きる」こと。世の中にあふれる理不尽を「なす側」にならないよう、自らの頭で考え、襟を正して生き、理不尽な要求を飲むこともないという。社員にも「プライドをもって仕事をしてほしい」と常々語っている。

性格や言動に裏表がない田村社長にはファンが多い。それは社外に限らず、社内の人間関係にも大きく影響を与えている。定期的に開催される各グループ会社が集まる会議では、それぞれの問題や課題を正直に打ち明け、全員で解決していく。こういった信頼関係のある風通しのいい社風だからこそ同じ方向を向き、急成長できているという。
各事業会社の社長は口をそろえて「田村社長は拡大に集中してください」と話す。「支えてくれている仲間がいることが、グループの拡大していく上での原動力になっている」と田村社長は語る。

成功を続けているM&Aだが、むやみやたらにしている訳ではない。「入口を間違わないことです。M&Aにはさまざまなメリット、特にシナジー効果があるといわれますが、『一緒に大きくなろう』という思いに共感し、お互いにリスペクトできるかどうかが大切でしょう」と強調する。

M&Aをしていく中である思いが芽生えた。海があり山がある美しい和歌山の発展に貢献aし、多くの人に住んでもらうために雇用を生み出したいという考えから、今では和歌山だけでなく、若者が働きたいと思う会社、家族に自慢したい会社をそれぞれの地域で増やしている。地方の課題を聞くと、「実行スピードがゆっくりであること」と即答。「多分思いつくアイデアは都会でも地方でもそう変わらないはずです。変化を伴うアクションに時間がかかる傾向があると思います」と指摘する。

「強い者、賢い者が生き残るのではなく、変化できる者が生き残る」というダーウィンの名言に強く共感している。今はM&Aで規模を大きくし、高度な経営人材を社内に招くフェーズで、今後はエリア展開を広げつつも、消防設備や電気工事などの事業を横展開していく未来を描いている。「柔軟にできることをやっていく。M&Aはあくまでも一つの手段であり、固定概念にとらわれることなく、時代に応じて変化していきます」と笑った。

現在の売上高は44億円だが、1000億円を目標に据え、自らが40歳になる3年後に100億円規模を目指している。このままいけば前倒しで達成できる見込みだという。「今後は同志を増やしていき、時代の流れを見極めて新たな目標を考えます」と伸びやかに語る。

阪和ホールディングスがベースとする建設・製造業はBtoBのビジネスだったが、今後の展開では一般の人にも認知してもらえる事業ができれば面白いと考えている。また、このままグループの資本力を強化し、グループ会社がある地域に、ショッピングモールやアウトレット、遊園地など大規模な商業施設を建設する夢を持っている。「『和歌山をより元気にしたい』との思いの中でスタートしましたが、今後はM&Aでご縁をいただいた企業の地域も発展させていきたい」と事業を拡大している。

「関西にとどまる事なく、阪和グループが地方を引っ張っていけるような存在になりたい」。そう口にする田村社長には、どんどんファンが増えていく。これからもより一層強いチーム、応援されるチームへと成長していくのだろう。